これが勇者の剣の真説

3/20
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
 一日目は、何事もなく終わった。警備をしている間に一度、礼拝堂の中の簡単な清掃をした。勇者の剣の礼拝堂での警備の任務には、その清掃も含まれているのだと、キティは話す。任務を終えて、街の方へと戻る道すがら、キティが三人に聞かせた話は、勇者の剣に挑戦した人の話だった。  勇者の剣に挑戦して、抜くことが出来なかった人の中には、逆上して勇者の剣を汚しに来る人がいるのだという。それを綺麗に掃除して後片付けするのも、警備の仕事の一つという話だ。日々の簡単な清掃はモップを使うが、その時には魔法を使ってもいいらしい。 「掃除なんかに、魔法を使うんですか?」  その話を聞いて、ピートが言った。魔法というのは本来、魔物と戦うためのものである。そんな風に魔法学校で習うわけではないが、街のほとんどの人たちは、そう考えている。 「勇者の剣があるから、そこで掃除をするのは怪我をする危険があるでしょう。勇者の剣というだけあって、切れ味は鋭いらしいのよ。だから、魔法を使うの。」  セオもレイも、勇者の剣に興味が無いわけではないから、キティの話を真面目な面持ちで聞いていた。セオもレイも、まだ勇者の剣に挑戦したことはない。  勇者の剣に挑戦するのに、年齢制限があるわけではないが、二人は興味があっても挑戦する気持ちには、まだなれていなかった。かつては、勇者が必要とされるくらいに、魔物が現れていたのかもしれないが、現代ではたまにしか魔物は現れない。それを、魔法士や騎士団が退治している。――それで事足りているのである。そのため、勇者が人々から求められているわけではない。だが、勇者の剣を抜くことが出来れば、人々から注目され、栄誉にあずかることができるだろう。勇者の剣に挑戦するのは、大人が多いという。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!