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圭一は車で引越し先へと向かっていた。
今回の引越し先は駅から徒歩5分くらいのマンションだ。今までは駅から徒歩15くらいのところに住んでいたから、暮らしは便利になるだろう。
圭一は、幼少期に郊外に住んでいたことがあったため、どちらかというと静かなところの方が好みであったが、駅近物件も悪くないなぁと思った。今度の最寄り駅は地下鉄の駅だから、騒音や振動はあまり気にならないだろうし、駅のそばには商店街やスーパーマーケットもあって、生活はとても便利だろうし、近くに大学があるから、学生達の姿をほぼ毎日見ることができるだろう。仕事で疲れて帰ってきても、若者達が勉学に励んだり、青春を楽しんだりしている姿を見たりできるのはきっといい刺激になるはずだ。
それに、マンション最寄り駅の乗降客数は、これまで住んでいたところの最寄り駅の乗降客数に比べてずっと多い。つまり、周辺に住んでいる人も多いということだ。電車は混むかもしれないけれど、その分、新たな出会いもあるかもしれないということだ。せっかく、新年度に新天地に向かうのだから、新しい友達の一人や二人、さらにいえば、恋人もできたらいいなぁ。
そんなことを考えていながら車を運転していたら、引越し先のマンションに着いていた。
圭一は引越し先の部屋へと向かい扉を開ける。そこには、すでに一人の男が立って居た。
「ご依頼人の中山様でいらっしゃいますね。私、ファスト引越しセンターの鈴木でございます。早速、作業に入らせていただいてもよろしいでしょうか。」
「いいですよ。よろしくお願いいたします。」
「では、始めていきますね。」
中山氏の言葉を受けて、依頼主の引越し先での生活を空想するのが好きな引越しドライバー鈴木圭一は、運転してきたトラックから中山氏の荷物を積み下ろして、中山氏の引越し先の部屋に運び込む作業に取り掛かった。
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