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第6話 聞きたくないノイズ
都会の喧騒の中、踏切の音が鳴り響く。
遮断機が降りて行った。
電車が右からの車両と左から車両が
すれ違いでと走り去っていく。
歩行者たちはまだ遮断機あがらないかと
待っていた。
ガード下のトンネルには、
ネズミの親子が走り去る。
川沿いの堤防付近では
草野球を楽しむ小学生がいた。
堤防のサイクリングロードでは自転車を
走らせる学生や、ベビーカーを引いて
散歩をしているお母さんがいた。
そんな平和な風景の県営アパートの
一室には、外に興味を持たない1人の
男の子がいた。
モノトーンの
6畳の子供部屋。
教科書やノートもない勉強机と椅子。
鉛筆1本と消しゴムひとつが
ペン立てにある。
5枚くらいシャツしか
かかっていないハンガーかけ。
洋服ボックスには
ジーンズのズボンが2本ある。
背もたれに少し力を入れながら、
ゆらゆらと動かして、
手元をじっと見る。
長い黒い髪が肩につきそうだった。
色がバラバラになった
ルービックキューブをくるくると
簡単に直しては崩して、
直しては崩してを繰り返した。
くるくるカチャカチャと触りながら、
窓から外を眺める。
空を見るのが好きだった。
青い空に浮かぶ雲が
綿飴だといいなと考えた。
そもそも、綿飴はそんなに
好きじゃないことを思い出す。
また下を向いて、
ルービックキューブを触っていた。
自然と鼻歌が出ていた。
静かに部屋に響いた。
その男の子の名前は大沢奏多
その頃、のリビングでは、
奏多の母親と祖母がソファに座り
コーヒーを飲みながら
何かを話していた。
「いつから気づいていたの?」
「私も全然気づきませんでした。
幼少期からそうだったなんて…。
私の家系には
そんな症状の人いませんでしたから。」
「麻実さん、それって私たち家族に
問題あるって言いたいわけ?」
「いえ、お義母さん
そういう意味で言ったわけ
じゃないですよ。」
奏多の母である大沢麻実は、
気まずい雰囲気だと感じ取って、
慌てて台所に行く。
今は、どんな言葉を言っても、
義母は都合良い解釈にはならないだろうと
予測した。
「その症状があるなら、すぐにでも
病院に連れていけばいいじゃないの?
どうなの?」
「いや、いろんな考え方ありますけど、
薬を飲んで直すってことはないと
思うんです。
誰だって、好きなものに
没頭することってあると思います。
人間であることは間違いないですから。
それより薬の副作用の方が心配で…。
暴れてしまったらそっちの方が…。」
深刻な顔で勇気を持って話す。
奏多の祖母、大沢繭子
は、麻実の考え方に納得できなかった。
「あのね!!麻実さん。
集団行動できないってことは
人様に迷惑かけてるってことなのよ!?」
言い争いになりはじめた。
ピイイインンっという高音ノイズが
奏多の両耳に響く。
頭が痛くなる。
奏多は、両耳を両手で塞いだ。
「つぅ……。」
持っていた大事なルービックキューブが
床にぽろんと落ちた。
「麻実さん!!
奏多くんが恥ずかしい思いするのよ。
先生にしょっちゅう怒られて…。
わかってる?!」
「……。」
母の麻実の耳もキインと高音ノイズが響く。
頭痛がした。
奏多はノイズの音に耐えきれず
1人、ラグマットの上に倒れ込んだ。
外では優雅にウグイスたちが
飛び交っていた。
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