ロープ

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 高校を卒業してからも友だちとはよく会っていた。卒業したての頃はそれこそ、3日と空けずに遊んでいた。  しかし、それも初めのうちだけだ。そのうち予定が合わなくなってきた。俺自身が疲れ過ぎていたり、試験やレポートでアイツらも忙しくなっていたからた。 3日おきだったのが、いつしか1週間になり、3ヶ月になり、1年になった。今じゃ3年だ。  3年前、居酒屋で呑んでいた時だ。確か、アイツらは就職活動を終えた辺りだったはずだ。  久しぶりに会えて俺はテンションが上がりまくり、飲み過ぎてしまった。もっとも久しぶりに飲むビールが美味すぎたのもあった。いや、ビールなんて雰囲気込みの飲み物だ。  俺は早々に潰れて壁に寄りかかってまどろんでいた。アイツらの話す声を聴いていると腹の底から安堵できる。何も構えなくて良い。飾る事も強がる事も何も要らない。目を閉じていてもほのかに光が感じられた。 「賢治。大変過ぎじゃね?」  俺の名前が出た。 「寝落ち早過ぎ」   お前らの声を聞いているとよく眠れそうだぜ。 「昔は1番騒いでたのにな」  すまねぇ。あんま寝てなくてな。それに今日は楽しすぎてな。 「なんかさ」と誰かが言った。「住む世界が違うくね」  一瞬、沈黙が生まれた。 「あ〜それ言っちゃう?」 「同情はするけどよ」 「話、合わなくなってきたもんな。しょうがないか。住む世界、違うもんな」  俺は何も言えなかった。それは眠くて声が出せなかったと自分に言い聞かせた。 「呼ぶのさ、これきりにしねえ?」そんな囁き声が耳に刺さった。  今度は沈黙なんて無かった。 「あ〜そうだな」 「コイツ、時間止まってるからな」 「きっと賢治の方も俺たちと一緒だと居心地悪いだろうしな」  そんな事はない、と叫びたかった。けど、できなかった。俺は息を忍ばせるように話題が変わるのを待った。呼吸すら許されない昏い海に閉じ込められたような感覚だった。光なんてどこにも差していなかった。
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