side 森野

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桃乃さんに結翔の住むマンションを案内した。 ブブッ……。 【社長、吉村結翔の事でお話ししたい事があります】 突然届いたメッセージを見て驚いた。 桃乃さんと別れて、私は会社へと急ぐ。 「どうしたの?」 「結翔の事故について、こんなものがポストに入っていました」 「何これ?」 社員が見せてきた紙には、【吉村結翔を事故に見せ掛けて突き落としたのは服部圭介だ】と書かれている。 圭介が? どうして、そんな事をする必要があるの? まさか、里穂ちゃんの事? 「手紙の中に、こちらのUSBが入っていました。再生しますか?」 「お願い」 動画が再生される。 結翔を誘導する場所で、確かに圭介が何かをしているのがわかる。 その手に何かが握られていて、キラキラと反射していた。 「ここにあるロープを切れやすい状態にしていたのではないかと思われます」 警察が置いていった結翔が落ちた場所の写真を見せられる。 確かに……。 どういう事? 圭介が、結翔を落としたって事? 「社長、服部の処分はどうしますか?」 「待って、待って。処分って何よ」 「稼ぎ額である吉村結翔を殺害しようとしたんですよ」 「これが、本物だって証拠はないでしょ?」 「偽物だって証拠もありませんよ」 この時の私は知らなかった。 圭介や里穂ちゃんとの関係にビビが入る事を……。 私と圭介が築き上げてきた信頼を簡単に破壊する事など奴らには取るに足らない事だって事も……。 「事実をきちんと圭介に確認するわ!それからでもいいかしら?」 「社長、そんな悠長な事を言っている時間はありません」 「どうして?」 ドンドンドンドン……。 「はい」 「失礼します」 「どうしたの?」 「吉村結翔のCMを大手が打ちきりにしたいと言ってきました」 「打ちきり?どうして」 「どうやら、これが送られてきたとか……」 【吉村結翔には妻がいる。そんな吉村結翔を一人暮らしのマンションのCMに起用するな!】 「何これ?」 「それと、これも届いたみたいです」 【吉村結翔のマネージャーの服部圭介は吉村結翔を殺そうとした】 「何よ!これ」 「社長、吉村結翔は結婚してるんですか?」 「えっ」 「結婚してないなら、事実じゃないですよね。でも、結婚してるなら服部の事も真実ですよね」 頭の中が真っ白でうまく言葉に出来ない。 結翔が結婚してないと認めれば、圭介の噂も嘘になる。 でも、もし、結翔の結婚がバレたら? 優秀な彼等を失う事にならないだろうか。 どうすればいい? どうすれば……。 社長として考えなくちゃ。 ちゃんと考えなくちゃ。
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