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「さて! これから俺達は、3つに分かれて行動する事になる。そこで、今後の連絡手段なんだけど……」
そう言うと、母様は指笛を吹いた。
すると、窓から真っ赤な鳥が飛んで来て母様の肩に止まった。
まだ小さな鳥だが、僕は一目見て分かった。
「か、か、か……母様! その鳥!」
思わず腰を抜かしそうになり、アレンに抱き留められたけど、アレンは硬直していた。
「あぁ……。記憶は無いんだけど、どうやら魔物の姿の時に助けたらしい。気が付いたら、俺の傍に居たんだ。なぁ、ちい助」
母様が呑気にそう言って、鳥の顎下を人差し指で撫でている。
僕がハッと我に返り周りを見ると、デーヴィトも顎が外れそうな程、口を開けて放心している。
しかし、僕達兄妹の中で一番大物で、性格は母様に似たのだろう。
エリザだけは
「まぁ、母様。可愛らしい小鳥ちゃん」
等と言って、微笑んでいる。
え? 父様はどうしてるか?って?
そんなの
『うちの多朗は、肩に鳥を乗せても可愛いなぁ~』
の顔をしてますよ!
最初に言っておくけど、父様に常識を当てはめちゃダメだからね!
そんな事を考えていると
「多……母様、その鳥が何だかご存知ですか?」
この中で一番の常識人であるアレンが呟いた。
すると母様は笑顔で
「え? 知らない。さすが異世界だよな、虎は白いし鳥が赤いなんてさ」
と笑っているじゃないか……。
母様、虎は白虎だし、今、あんたの肩に乗ってる鳥は……鳥は鳥でも朱雀ですから!!
心の中で盛大にツッコミを入れていると
「母様、名前はちい助なんですの?」
「いや、トラもちい助も適当に呼んでいるだけだからなぁ~。なんかきちんとした名前、着けてやらないとなぁ~」
母様とエリザが、ズレた話題で盛り上がっている。
分かってたよ……。
ええ、分かっていましたとも!
母様が異世界人で、聖獣ホイホイだって事を!
だけどさ、うちの国に四神のうち三神が母様の傍に居るって……。
そう考えながら、ふと脳裏に過ぎった。
もしかしたら、既に玄武と出会ってるんじゃないの?と……。
「母様、まさか亀と出会ったりは……」
恐る恐る聞いた僕に
「亀? この世界にも亀が居るのか?」
と聞いて来たので、ホッと胸を撫で下ろした。
そうだよね。
いくら母様が聖獣ホイホイだからって、一気に四神を集められる訳無いよね~。
なんて考えていると
「亀? 亀と言えば……」
と、父様が呟いたのだ。
(まさか、うちの国に四神が揃ってるの!)
びっくりする僕に
「ババ様の杖に亀のマークがあったような……」
と言い出したのだ。
「え? じゃあ、ババ様達、魔女の一族って……」
驚く僕に
「その話は、私が致しましょう」
ババ様がルシアを伴って現れた。
「ババ様? ルシアまで……」
驚く僕に、母様は腑に落ちた顔をして
「成程、ルシアが……」
と、呟いたのだ。
「え? 何? どういう事?」
みんなが母様の一言で納得した顔をしているのを、僕はキョロキョロしながら首を傾げると
「ルシアの魔力の強さを考えたら、納得だわ」
デーヴィトが深い溜め息を吐いて額に手を当てた。
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