母様が勇者と呼ばれる訳

4/15
前へ
/128ページ
次へ
「さて! これから俺達は、3つに分かれて行動する事になる。そこで、今後の連絡手段なんだけど……」 そう言うと、母様は指笛を吹いた。 すると、窓から真っ赤な鳥が飛んで来て母様の肩に止まった。 まだ小さな鳥だが、僕は一目見て分かった。 「か、か、か……母様! その鳥!」 思わず腰を抜かしそうになり、アレンに抱き留められたけど、アレンは硬直していた。 「あぁ……。記憶は無いんだけど、どうやら魔物の姿の時に助けたらしい。気が付いたら、俺の傍に居たんだ。なぁ、ちい助」 母様が呑気にそう言って、鳥の顎下を人差し指で撫でている。 僕がハッと我に返り周りを見ると、デーヴィトも顎が外れそうな程、口を開けて放心している。 しかし、僕達兄妹の中で一番大物で、性格は母様に似たのだろう。 エリザだけは 「まぁ、母様。可愛らしい小鳥ちゃん」 等と言って、微笑んでいる。 え? 父様はどうしてるか?って? そんなの 『うちの多朗は、肩に鳥を乗せても可愛いなぁ~』 の顔をしてますよ! 最初に言っておくけど、父様に常識を当てはめちゃダメだからね! そんな事を考えていると 「多……母様、その鳥が何だかご存知ですか?」 この中で一番の常識人であるアレンが呟いた。 すると母様は笑顔で 「え? 知らない。さすが異世界だよな、虎は白いし鳥が赤いなんてさ」 と笑っているじゃないか……。 母様、虎は白虎だし、今、あんたの肩に乗ってる鳥は……鳥は鳥でも朱雀ですから!! 心の中で盛大にツッコミを入れていると 「母様、名前はちい助なんですの?」 「いや、トラもちい助も適当に呼んでいるだけだからなぁ~。なんかきちんとした名前、着けてやらないとなぁ~」 母様とエリザが、ズレた話題で盛り上がっている。 分かってたよ……。 ええ、分かっていましたとも! 母様が異世界人で、聖獣ホイホイだって事を! だけどさ、うちの国に四神のうち三神が母様の傍に居るって……。 そう考えながら、ふと脳裏に過ぎった。 もしかしたら、既に玄武と出会ってるんじゃないの?と……。 「母様、まさか亀と出会ったりは……」 恐る恐る聞いた僕に 「亀? この世界にも亀が居るのか?」 と聞いて来たので、ホッと胸を撫で下ろした。 そうだよね。 いくら母様が聖獣ホイホイだからって、一気に四神を集められる訳無いよね~。 なんて考えていると 「亀? 亀と言えば……」 と、父様が呟いたのだ。 (まさか、うちの国に四神が揃ってるの!) びっくりする僕に 「ババ様の杖に亀のマークがあったような……」 と言い出したのだ。 「え? じゃあ、ババ様達、魔女の一族って……」 驚く僕に 「その話は、私が致しましょう」 ババ様がルシアを伴って現れた。 「ババ様? ルシアまで……」 驚く僕に、母様は腑に落ちた顔をして 「成程、ルシアが……」 と、呟いたのだ。 「え? 何? どういう事?」 みんなが母様の一言で納得した顔をしているのを、僕はキョロキョロしながら首を傾げると 「ルシアの魔力の強さを考えたら、納得だわ」 デーヴィトが深い溜め息を吐いて額に手を当てた。
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

312人が本棚に入れています
本棚に追加