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「妙だと思ったんだよ。でも、もう大丈夫なの?」
「大丈夫じゃ。もう、呪いは完全に解けておる。」
デーヴィトとババ様が会話をすると
「ルシアは、我等魔女の一族の守り神である玄武様の化身の一部じゃ。玄武様は身体が大きく、動けば大きな地震が起きて災いとなってしまうのでな。化身を産んで、この世界を我等魔女の一族に護らせていたのじゃ。……しかし、まだ生まれて間も無いルシアを、何にも知らないルーファスが攫ったのじゃ。シルヴァ王と同じ金髪で、近い瞳の色をしているというだけでな」
苦々しい顔をして呟くと
「シルヴァ王が、ルシアの心臓に打たれた呪いの楔に気付いて下さり、魔力で打ち砕いて下さったので助かったのじゃ。まさか心臓に打たれておるなんて思わなんだからな……。中々、呪いの楔を見つけ出せなくてのう」
ババ様がそう呟くと、母様が頬を引き攣らせて
「へぇ……、シルヴァ。なんでお前、ルシアの胸に呪いの楔が打たれているって分かったんだよ」
と呟いた。
「え?……そ、それは……」
「しかも、打ち砕くって事は……お前……」
目を据わらせる母様と、オドオドする父様。
「多朗様、シルヴァ王を責めないで上げて下され。貴方様を救うのには、ルシアを抱かねば貴方様に掛けられた呪いが解けなかったのです」
ババ様、トドメの一言を言ってしまったよ。
母様は目を見開いて父様の顔を見ると、ブルブルと身体を震わせ始めた。
目の前に居るルシアは、まるで精霊のように美しい姿をしている。
容姿にコンプレックスがある母様にとって、目の前に居る見目麗しい中性的な美青年を抱いたというのはショックなのだろう。
「多朗、信じてもらえないかもしれないが、最後まではしていない! 確かに、何処か呪いに関係する鍵が無いかと裸は見たけど……」
必死に言い訳する父様の顔を見上げ、母様はニッコリと微笑んだかと思ったら、父様の頬に平手打ちをしたのだ。
「シルヴァ、嘘を吐くな! 呪いを解くだけの魔力を与えるには、お前と交わらなければならないだろうが! 嘘を吐かれるくらいなら、俺の為に抱いたと真実を言われた方が良かった」
涙を浮かべる母様に、平手打ちされた父様は呆然としている。
聖獣の話から、とんだ修羅場になっていると
「シルヴァ王は、本当に私を抱いてはいませんよ」
ルシアが冷静にそう呟いた。
「え?」
驚く僕達に
「もし抱かれていたら、私は本当にシルヴァ王の下僕となっていたでしょう。私はルーファスに抱かれ、次にセイブリア帝国の王に抱かれ、悪しき者にこの身体を汚されました。それにより、彼等の歪んだ欲望を叶える為の人形になった私は……おそらくたくさんの誤ちを犯したのでしょう。しかし、シルヴァ王は私を抱かなかった。シルヴァ王を誘惑する為に衣類を脱ぎ捨て、抱き着いた私にシルヴァ王の力を注ぐ為にキスはなさいました。しかし、それ以上の行為をする前に、貴方を護る聖獣達の力を、シルヴァ王を通して唇から私に流し込み呪いを解いて下さったのです。まぁ……呪いを解くために、杭を打たれた胸には触れましたが、キス同様、あくまでも呪詛を解くために手段という感じで、杭に触れただけですよ」
淡々と話すルシアに、母様含め僕達は、ゆっくりと父様の顔を見た。
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