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だってさ、精力魔人の父様だよ?
出会った頃のルシアが父様にそっくりでも、何もしないなんて……。
疑いの眼で見つめる僕達に、父様は藁にもすがる思いで何度も頷いているようだった。
しかし、追い詰められた父様は、ついに
「僕は多朗以外に反応なんてしない!」
と叫んだのだ。
その言葉にエリザが首を傾げたので
「父様! それ以上は言わないで!」
そう叫ぶと、母様は首まで真っ赤にして
「ごめん、シルヴァ。一瞬でも疑って」
顔を両手で隠し、俯いてしまう。
僕は本格的にヤバいと思い、アレンに目配せをしてエリザの目と耳を2人で塞いだ。
すると父様がすかさず母様を抱き締め
「多朗、むしろ嫉妬してくれて嬉しいよ」
なんて囁き
「シルヴァ……本当にごめん」
涙を浮かべた母様が父様を見上げた。
はい!僕達も、顔を背けて何も見ていません。と、少しだけ気を利かせたのが悪かった。
嫌さ、僕達も居るから軽いキスで終わる思うじゃない?
しかし、母様のくぐもった呻き声が聞こえて来て
「シルヴァ……、ちょっと……待て」
慌てる声になった。
「デーヴィト!」
見えないけど、父様のアホの事だから何してるか想像が出来るが故に、デーヴィトに救いを求めた。
すると、さすがデーヴィト。
「はい! 続きは夜か、2人になってからでお願いします」
デーヴィトの冷静な声が響き、そっと母様達の方を見ると、母様、上着をひん剥かれそうになっていたらしく、慌てて身なりを整えているじゃないか。アレンを見上げたら、何も見てませんって顔をしているけど、首まで真っ赤だよ。
え? 何処から見たの?
何処まで見たの?
アレンの顔を見上げていると
「嫉妬もスパイスって分かるけど、ババ様達も居るんですよ! 少しは自重して下さい。父様!」
デーヴィトに怒られて、父様がしょんぼりしている姿が見えた。
……どっちが父で、どっちが子供なんだか。
冷静なデーヴィトに
「デーヴィト、良く平気だな」
と聞くと
「ここで二人を起こすのは、俺の役目なんだよ。放っておくと、父様は母様を離さないからね。毎朝、父様を母様から引き剥がしてるから慣れた」
衝撃的な事実に、開いた口が塞がらない。
「父様……」
呆れた顔をすると
「だって、半年も多朗と引き離されていたんだよ!」
必死に訴える父様に
「エリザだって、我慢しているのに……」
心底呆れた声しか出ない。
「本当に……仲良しじゃのう」
ババ様の声に、ハッと我に返る。
「すみません、ババ様。お見苦しいものをお見せして」
頭を下げる僕に、ババ様は高笑いをすると
「仕方あるまい。四神が勇者様に集まり、勇者様が受け止め切れないエネルギーが伴侶のシルヴァ王に流れているのじゃ。まぁ、そんなに言うなら、そなた達にも分けて上げようか?」
ババ様に言われて、僕は甘く見ていた。
「俺は遠慮する」
キッパリ断るデーヴィトに
「えっ!そこはさ、4分割してあげるべきじゃないの?」
なんて言ってしまったので、後で後悔する事になるなんて思いもしなかった。
僕はこの日の夜、父様が受け止めていた力の1/4を身体に受けて、父様の偉大さを知る事になるのだ。
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