母様激怒

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「デーヴィド! 母様と一緒に居たなら、何で止めてくれなかったの?」 ゲホゲホと咳き込むアレクサス王子が心配で、デーヴィドの腕の中で暴れて叫ぶと 「はぁ? 何で止めなくちゃいけないの? 俺の大切な片割れである亜蘭を、穢らわしいと言った奴を助ける言われは無い!」 これまた、めちゃくちゃ怒った顔をしたデーヴィドが叫んだ。 母様は地面に這いつくばって咳き込むアレクサス王子を見下ろし 「セイブリア帝国第二王子、アレクサス。我が息子を罵倒した罪により、不敬罪として和平条約の無効と縁談の話は白紙にしてもらう! 一切の言い訳は聞かない!」 吐き捨てるように言うと 「行くぞ、亜蘭、デーヴィド」 そう言って、アレクサス王子に背を向けて歩き出した。 「待って! 母様、待って! お願い、話を聞いて!」 僕がどんなに叫んでも、母様は振り返らずに王宮に帰ってしまった。 そして母様と入れ違いに、リアム団長率いる騎士団がアレクサス王子を連行して行く。 僕は必死にデーヴィドの腕から逃れようと暴れたが、デーヴィドが離してくれない。 「デーヴィド、離して! 待って、お願いだから僕の話を聞いて! 団長、リアム団長! 待って。アレクサス王子に、酷いことしないで!」 泣きながら叫んでいると、リアム団長が僕の頭に手を乗せると 「大丈夫です。アレクサス王子には、部屋で反省して頂くだけですから……」 そう言って、優しく微笑んだ。 「本当に? 絶対、牢屋に入れたらダメだよ。痛い事も、酷いこともしないで……」 「はい、約束します」 リアム団長は僕の頬に流れる涙を優しく拭うと、僕に背を向けて 「アレクサス王子を部屋にお連れしろ! 一応、国賓だ。丁重に扱え」 そう指示をしているのを聞いて、ホッと一息吐いた。 「あんな奴に、そこまでする必要無いのに」 ポツリと呟いたデーヴィドに、僕は思い切り睨み付けて 「デーヴィドも母様も、大嫌いっ!」 そう叫んだ。 こんな子供じみた反抗しか出来ない自分が、本当に情けなかった。
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