312人が本棚に入れています
本棚に追加
隣国の王子
出会いは突然やってくる。
母様からそう聞かされていたけれど、本当にそうなんだと実感させられる出会いをした。
その日は、王宮に隣国の第二王子が謁見に来ると、珍しく王宮がバタバタしていた。
「亜蘭やデーヴィドと同じ年齢の王子らしいよ」
周りがバタバタしている中、母様だけのんびりとお茶を飲みながら僕達にそう話してくれた。
「なんでも、異国の血が混じっているらしくてね。俺や父様とも違う肌の色をしているらしい」
母様の言葉に、僕はその王子に興味を持った。
僕達の国では、ほとんどが父様のような白い肌に金髪だ。僕と母様だけが、父様やこの国の人達と肌の色が違う。
瞳の色は様々だが、赤、青、緑、黄色の4つに分けられる。
父様の瞳の色の濃いブルー。
デーヴィドは深い緑。僕は金色だ。(特に金色は、王家にしか生まれないらしい。基本、貴族でも黄色なんだよね)
王家は色が濃く、王家の血から遠ざかる程に色は薄くなっていく。そして平民は、この4色が薄くなった色をしている。
だから、僕や母様はこの国では物凄く目立ってしまう。
母様は元々、この世界では無く異世界から来たから、肌や瞳の色が違うのだと話してくれた。(母様の瞳の色は、濃い焦げ茶色だ)
幼い僕には、それがどれほど勇気の居ることだったのか分からなかったけれど、今ならなんとなく分かる。
父様だけを信じて、全てを投げ捨てて父様の手を取った母様。
時折、寂しそうな顔をして空を見上げている事がある。
そんな時は、必ず父様が母様にそっと寄り添い、バルコニーで何かを話しながら二人で空を見上げている。
僕には、父様や母様。デーヴィドやエリザを捨てて、知らない世界に飛び込む勇気なんて無い。
しかも、僕を知らない人達だらけの場所に飛び込むなんて、到底無理な事だ。
僕は、この国の……王都の人達に可愛がられて育った。世間知らずと言われても、僕は、僕や家族を愛してくれているこの国から出るつもりは無い。
……まぁ、正確に言うと『出られない』んだけど。
僕達王家の人間には、火、風、水、土の龍神様が付いている。
この4つが揃っていなければ、国は乱れ波乱が起こるらしい。
なんでも母様は、その波乱を治める為にこの世界に召喚されたんだとか。
だから国民は、母様を国母様と敬い崇めるんだろうなぁ~。
僕はこの国が復興すると共に生まれたから、詳しい事は分からない。
それでも、僕達が寄り添い助け合わなくちゃならないって言うのは理解している。
だから僕はきっと、何処かの国のお姫様を娶るのだとばかり考えていたんだ。
だから、隣国の王子『アレン』との出会いも、エリザの婚約者として現れたのだと信じて疑わなかった。
最初のコメントを投稿しよう!