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僕とデーヴィドにエリザは、隣国の王子とは晩餐会で会う予定になっていた。
だけど僕は待ちきれなくて、こっそり木に登って到着を待ち侘びていた。
僕達の国は、基本的に外交をあまり行わない。
この国は、他国に比べて特殊なんだとか。
まぁ、確かに.......つい最近まで、王家の身体の中に龍神が依代として入っていたらしいからなぁ~。
しかもその力欲しさに無駄な争いが起こり、たくさんの血が流れたと父様と母様が言っていた。
それで母様が、依代を他に作って祀り、僕達は龍神に守護されている立場に変わったらしい。
僕は土を司るマテオが守護神だから、瞳の色が金色なんだと母様が教えてくれた。
僕達の瞳の色は、守護してくれている龍神の色になっているらしい。(父様は、母様が異世界人だから母様の守護龍の色らしい。でも、力を使う時は髪の毛がプラチナ色になり、瞳の色が守護龍の赤に変わるんだそうだ)
僕達の国は、守護神である龍神が守っているので、他国から侵入が出来ないらしい。
攻めようとしても、僕達の国に近付く事が出来ないのだとか。
だから、基本的に僕達の国は他国の人を決して受け入れない。
でも何故か今回は、隣国の第二王子だけ友好の証で入国を許可したらしい。
この国に入国出来るのは選ばれた人だけなので、国境近くに迎えの馬車を送ったのだとか。
様々な国から友好関係を結びたがられる僕達の国は、他国からは謎が多くて魅力的な国なのだと家庭教師の先生から教わった。
だから僕は、初めて見る異国の王子に胸を躍らせていた。(しかも、肌の色がこの国の人達や母様や僕とも違うなんて、絶対に見てみたい!)
迎えに行った馬車が戻り、どんな人が現れるのかワクワクして待っていると、馬車のドアが開いて現れた人物に声を失った。
漆黒の長い髪の毛を後ろに1束に結び、ブロンズ色の肌。彫りの深い顔立ちにも関わらず、切れ長の奥二重の目が凛々しさを際立たせていた。
スラリとした体躯が、身に付けている黒い布地にプラチナ色の刺繍を施した正装をカッコよく着こなしていた。
(なんて綺麗な人なんだろう.......)
思わずうっとり見蕩れていると、出迎えていた母様と目が合ってしまう。
(ヤバ!)
慌てて隠れようとして、手を滑らせて木から真っ逆さまに落ちてしまった。
「亜蘭!」
悲鳴に近い声で叫ぶ母様の声に、あぁ.......これは骨折位はしちゃうかな?そう思ったその時、『ドスン』っと誰かに抱き留められた。
驚いて見上げると、浅黒いブロンズの肌に漆黒の髪の毛。
僕を見下ろす瞳は、僕と同じ金色の瞳をしていた。
フワリと香る爽やかな香りに、(イケメンは、匂いまでイケメンだなぁ~)なんてうっとりしていると
「大丈夫ですか? 怪我は無いですか?」
なんと、発した声までイケメン!!
甘く優しい声に、思わず無言で頷いた。
僕を抱き留めた身体は鍛え上げられていて、めちゃくちゃ良い身体をしている。
そっと僕を下ろした彼に
「ありがとう、アレン」
と言った瞬間、彼の笑顔が固まった。
(あ.......あれ?)
僕が首を傾げると、彼は顔を引き攣らせ
「いきなり、馴れ馴れしく愛称呼びですか?」
そう呟いた。
(え?)
疑問の視線を母様に向けると、母様が両手を合わせて謝っている。
え?何なに?
慌てて彼を見ると、僕を睨みながら
「初めまして、亜蘭王子。私はアレクサス・ファン・デイビスと申します。国では、極親しい者のみにアレンと呼ばれております」
嫌味タップリに言われて、慌てて母様を見た。
ひたすら両手を合わせて謝罪する母様に、父様が呆れた顔をすると
「アレクサス王子、我が愚息が大変失礼を致しました。また、危ない所を救って下さり、感謝申し上げます。どうやら我が愛しの妻が、アレクサス王子の名前を、誤った名前で伝えてしまったようで.......。私の顔に免じて、許してはもらえないだろうか?」
父様が美しい顔を申し訳なさそうにして言うと、アレクサス王子は深い溜息を吐いてから
「私も大人気ない対応をしてしまい、すみませんでした」
と一礼して、僕に明らかな作り笑顔で微笑んだ。
だけど気付いてしまった。
その顔は、完全に僕を『嫌い』な人間として認識した顔だった。
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