第三話 逆転劇

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『王太子殿下、婚約パーティーを開催』  そんなお触れが堂々と全国を駆け回ったのは、ソフィーネがトンプスキンの養女となって半年後のことだった。  その間、彼女はトンプスキンの屋敷と王宮を行ったり来たりしていた。  いくらリチャードの後押しがあるとはいえ、国王や王妃になんの断りもなく婚約者になどなれるわけがない。  しかし国王も王妃も、ソフィーネの人柄に惚れ、彼女の境遇を知るや涙を浮かべて「ぜひリチャードの嫁になっておくれ」と言った。  こうして婚約パーティーはつつがなく始まった。  国中から貴族という貴族が集まって来る。  今までソフィーネが参加していたパーティーの比ではなかった。  位の高い貴族たちが一同に会する場は圧巻の一言。  まるで国中が大騒ぎをしているかのようだった。  そんな中、ソフィーネは控え室でドキドキしながら出番を待っていた。  つい半年前まで「ブスキモ令嬢」と言われていた自分が、まさかこんな大舞台に立たされるとは。  緊張して吐きそうだ。  しかしそんなソフィーネの緊張を察してか、リチャードが控え室に顔を出した。 「やあ、ソフィー。平気かい?」  いつものリチャードの人懐っこい笑顔を見て、ホッと息を吐く。 「正直、平気ではありません。でもリチャード様の顔を見たら少し落ち着きました」  リチャードは愛しいソフィーネの頬に軽くキスをすると、一緒に鏡を見た。 「大丈夫、堂々としてればいい。ほらご覧、君はこんなにも美しい」  大きくて立派な鏡に映るソフィーネの姿は、まさに女神のような美しさを放っていた。  トンプスキンの娘になってからというもの、彼女は毎日髪を洗い、保湿クリームで肌を潤し、健康的な食事を続けて行った。  その結果、見違えるほど美しくなったのだ。  一昔前までは考えられない変化だった。  トンプスキンの屋敷の使用人たちも、日に日に美しくなっていくソフィーネに歓喜し、より一層心酔していった。  こうして迎えた婚約パーティー。  彼女の幸せを全員が祝ってくれていた。 「みんなにも見せてあげたかったな」 「見せられるさ、あとで顔を出しに行こう」 「はい」  ソフィーネはリチャードと手をつなぎ、控え室をあとにした。
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