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『王太子殿下、婚約パーティーを開催』
そんなお触れが堂々と全国を駆け回ったのは、ソフィーネがトンプスキンの養女となって半年後のことだった。
その間、彼女はトンプスキンの屋敷と王宮を行ったり来たりしていた。
いくらリチャードの後押しがあるとはいえ、国王や王妃になんの断りもなく婚約者になどなれるわけがない。
しかし国王も王妃も、ソフィーネの人柄に惚れ、彼女の境遇を知るや涙を浮かべて「ぜひリチャードの嫁になっておくれ」と言った。
こうして婚約パーティーはつつがなく始まった。
国中から貴族という貴族が集まって来る。
今までソフィーネが参加していたパーティーの比ではなかった。
位の高い貴族たちが一同に会する場は圧巻の一言。
まるで国中が大騒ぎをしているかのようだった。
そんな中、ソフィーネは控え室でドキドキしながら出番を待っていた。
つい半年前まで「ブスキモ令嬢」と言われていた自分が、まさかこんな大舞台に立たされるとは。
緊張して吐きそうだ。
しかしそんなソフィーネの緊張を察してか、リチャードが控え室に顔を出した。
「やあ、ソフィー。平気かい?」
いつものリチャードの人懐っこい笑顔を見て、ホッと息を吐く。
「正直、平気ではありません。でもリチャード様の顔を見たら少し落ち着きました」
リチャードは愛しいソフィーネの頬に軽くキスをすると、一緒に鏡を見た。
「大丈夫、堂々としてればいい。ほらご覧、君はこんなにも美しい」
大きくて立派な鏡に映るソフィーネの姿は、まさに女神のような美しさを放っていた。
トンプスキンの娘になってからというもの、彼女は毎日髪を洗い、保湿クリームで肌を潤し、健康的な食事を続けて行った。
その結果、見違えるほど美しくなったのだ。
一昔前までは考えられない変化だった。
トンプスキンの屋敷の使用人たちも、日に日に美しくなっていくソフィーネに歓喜し、より一層心酔していった。
こうして迎えた婚約パーティー。
彼女の幸せを全員が祝ってくれていた。
「みんなにも見せてあげたかったな」
「見せられるさ、あとで顔を出しに行こう」
「はい」
ソフィーネはリチャードと手をつなぎ、控え室をあとにした。
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