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第二話 青年との出会い
ソフィーネは夢を見ていた。
幼い頃の夢だった。
まだ両親がいて、たくさんの使用人がいて、多くの人々から愛情をたっぷり注がれている幸せだった日々の記憶。
母はソフィーネに言った。
「どんな時でも笑顔を絶やさず前向きでいなさい。笑顔で前を向いていれば、向こうから幸せがやってくるわ」
それが母の口癖だった。
どうして忘れていたのだろう。
ソフィーネはそんな母に言いたいことがたくさんあったが、声が出なかった。
そんなソフィーネを母が優しく抱きしめる。
声は出せなかったが、彼女にはそれだけで十分だった。
(ありがとう、お母様)
両親が死んでから、初めて心が安らいだ気がした。
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