第二話 青年との出会い

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 パチッと目を開けてソフィーネはギョッとした。  気付けば見知らぬ寝室の見知らぬベッドで寝かされている。 (なに? どういうこと?)  慌ててベッドから起き上がる。  見れば綺麗な服に着替えさせられていた。  そしてその脇には、ビリビリに破かれていたはずのドレスが元の状態のまま直されて壁に吊り下げられていた。 (すごい、ドレスまで元通りになってる……)  ベッドから足を下ろすと、ふかふかの絨毯が素足に気持ちよく吸い付いた。  かなり高級そうな部屋だった。  よく見るとベッドもキングサイズでかなり上質である。 (ここ、どこ?)  そう思っていると、一人の女性がソフィーネに話しかけてきた。 「気が付かれましたか?」  メイド服を着た女性だった。  優しそうな瞳をしている。  彼女は裁縫の途中だったのか、手にした服を横に置くとソフィーネに言った。 「少々お待ちくださいませ。今、旦那様をお呼びいたしますから」  そう言って出て行くメイド。  ほどなくして二人の男性がソフィーネの前に姿をあらわした。 「おお! 目が覚めましたか!」 「ああ、よかった」  人懐っこそうな中年の男性と、目を見張るような金色の髪をした青年だった。  中年の男性はソフィーネの手を取ると、心配そうな顔で尋ねた。 「怪我はしておりませんか? どこか痛いところは?」  ソフィーネは何が何やらわからず、とりあえず首を振った。 「いえ……。痛いところは特に……」 「本当にもう、王太子殿……んんっ! リチャード様が無理やり欄干から引きずり下ろしたものですから、頭でも打ったのではないかと心配しましたよ」 「飛び込む寸前だったのだから仕方なかろう」  金髪の青年がムスッとして答える。  しかしソフィーネに顔を向けると優しい笑みで問いかけた。 「にしても、大丈夫かい? ずいぶん思いつめたような顔をしていたけど」  ソフィーネは目を見張った。  こんなに整った顔をした男性は見たことがない。  今まで出席したパーティーでも、女性たちが騒ぐ美男子は数多くいた。  けれども、今目の前にいる青年は彼らの比ではないくらい美しかった。 「は、はい、大丈夫です……」  そう答えるソフィーネに、中年の男性が眉をひそめて青年に言った。 「リチャード様、大丈夫なはずはございますまい。橋から飛び降りようとしていたのですぞ?」 「ああ、それもそうだな。君、何があったか差し支えなければ教えてもらえないだろうか」  青年のどこか威風堂々とした凛とした言葉に、ソフィーネは抵抗することもできず、今までのいきさつを語り出した。  両親が他界してシューベル男爵のもとに引き取られたこと。  そこでは奴隷のような毎日を送らされていたこと。  パーティーの帰りに義理の妹の手引きで犯されそうになったこと。  すべてを語り終えると、人のよさそうな中年男性はハンカチを取り出して「ううう、なんとむごい」と涙をふいていた。  対する青年は、ソフィーネの言葉を聞いてすぐに人を呼び、それが事実かどうかを確認するように命じた。
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