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彼のSNSに載っていた私の写真。
でも昨日見たらすでに私の写真は削除されていた。
そして私の存在なんてなかったことにするみたいに、そこには新しい彼女の写真が載っていた。
「ねぇ月、信じられる? 私と彼が別れたのは1週間前なのに、新しい彼女はね、もう妊娠中なんだって。二人は結婚するんだって。一体どういうつもりで彼はずっとここに帰ってきて――ッ……」
見なければよかった。そうすれば、こんな惨めな思いをせずに済んだ。
零れる涙は悲しさ? 悔しさ? 怒り? もうわからない。
「彼女に言いたかった。そこは私の場所よって。奪わないでって。私の場所を返してって……そう言ってやりたかった」
彼と結婚して幸せな家庭を築くのは私のはずだったんだ。
見なければこんなふうに追い打ちをかけられることもなかった。見なければ、自分がこんなにも穢れた人間だって思うこともなかった。
「死んじゃえ、って。彼女なんか死んじゃえばいいのにって。それでお腹の子も一緒に死んじゃえばいいのにって、そんなことを思っ――……」
なんて私は穢れているのだろう。なんて醜いのだろう。
そんな恐ろしいことを願った自分がすごく嫌になって許せなくなって……それで気付いた。
「違うの……死んだ方がいいのは、こんなにも醜い自分なの。だから……」
だから檸檬を掴もうって思った。どうしても手を伸ばしたかった。
あの光輝を手に掴めば、こんな醜い私でも少しは綺麗になれるかもって思ったから。
でも月は言った。「遠い」って。
そうだ、遠い。
こんな私に、あんなにも輝いたものが掴めるわけがなかったんだ。
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