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3:スーパー銭湯デート(1)
私と忍、今日はスーパー銭湯にやって来ました!
まず受付でお金を払います。
フリータイムか時間制限ありかですが、私たちはフリータイムにしました。
忍の奢りです!
「じゃあ銭湯行こうか」
「うん」
タオル、館内の服、それを入れる布製の袋を選ぶ。
忍は幼少期と異なって高身長のため、服は大きいものを選んでいた。
まずは男女分かれて更衣室へ。
無数のロッカーから選んで、服を脱いだら銭湯へ。
身体を洗って、室内の湯に浸かる。
温もりが全身を駆けていく。
ホッとつい息が漏れた。
身体が温まると、次は炭酸へ。
それから美容効果があるという真っ白な湯を味わう。
最後に、温度高めの壺湯に入る。
更衣室で服を着て、シュシュや貴重品を持って。
瓶に入ったバナナオレを飲む。
熱い身体が冷えたバナナオレで落ち着いていく。
髪乾かさないと。
スマホを開くと、既に忍は暇らしい。
濡れたまま漫画を読むわけにはいかない。
『先に昼食頼んでおいて』
『分かった。見てこれ』
忍から送られてきたのは、配膳ロボットの写真だ。
「髪長いと手間だ」
髪のまとまりを解くように乾かしていく。
ある程度乾かすとタオルを巻いて乾かす。
『鉄板ハンバーグとカットステーキにした』
『もう到着した』
スマホを見るとそう書かれていた。
ようやく乾かし終わる。
もう少し髪は短くてもいいのだろうか?
「忍、遅れました。先に食べても良かったのに」
「鉄板熱いから気をつけて」
「待っててくれたんだ」
「二人で食べた方が美味しい」
「そっか」
「シュシュ、似合ってる」
「ありがと」
一口サイズのカットステーキを食べる。
肉の繊維が柔らかく食べやすい。
噛むほど脂が溢れて、酸味のあるデミグラスソースと合う。
「これ美味しい」
「僕もそう思う。あれ見て」
「うん」
一度忍の人差し指を見て、示す方向に視線を向ける。
タブレットを付けた配膳台がローラーで移動していた。
「すごいよね?」
「うん。この米もつやがあって、甘くて、粒がしっかりしていてもちもちしてて、肉とよく合う。みそ汁も出汁が効いてて美味しい」
「え?」
「どうしたの?」
「このハンバーグ、割ると肉汁すごい」
「ほんと。美味しい」
食事を終える。
私と忍は合流したということで。
せっかく来たスーパー銭湯を見て回ることにした。
「忍、ゲームセンター」
「懐かしい。格闘ゲームもあるね。理央、どうする? 何年ぶりか分からないけど」
「もちろん。私が勝ち越してたからリベンジってこと?」
「容赦はしない」
ゲームの台に向かい合うように立つ。
忍は屈んでいるようだった。
きつそうな体勢だよね。
結果は私の四連勝だった。
「理央、もう一回やろう」
「でも」
「ここまで惨敗なのはちょっと悔しい」
忍は程度に姿勢を伸ばしながらボタンを押すようになると屈む。
ボタンを押す速度の違い、やり合うときの集中力。
背の高い忍が私に勝つのは不可能だった。
わざと負けるわけにもいかず。
「理央は強いね」
「でしょ?」
忍はきっと気づいていない。
でも背が伸びてできないことなのだ。
私が髪を伸ばしてなかなか乾かなくなったように。
あの頃とは違う。
それに、今私は忍のことが心配になって、あの頃の無鉄砲さ、無敵のような元気を出す勇気がない。成長した。背が伸びた。腰を痛めるんじゃないかって、心配になってしまった。
「あとは、岩盤浴とマッサージ。卓球とかもできるって」
「いいね、卓球。忍、やろう」
今度は私がぼろ負けした。
忍の力には敵わない。
身長差もあるし男女差もある。
「私疲れた」
「僕も。コーヒーでも飲もう。ソフトクリームもあるみたい」
「じゃあ私シャーベット食べる」
「なにそれ、最高じゃん。どこにある?」
「ほらそこ。新商品って」
「よく気づくね!」
私と忍では目線が違う、見てるものが違う。
なんて、考えすぎだ。
甘いもの食べて心を落ち着けよう。
「理央。今日は楽しい」
「うん」
「理央?」
「いや、なんでも」
「シャーベット食べたら漫画読もう」
忍は美味しそうに食べている。
私が考え事をしていると、忍は笑ってスプーンを私のカップに。
「もらいっ」
「ちょっと!」
「美味しい。僕のも食べる?」
「うん」
「もっと食べてもいいのに。ねえ、どう?」
「美味しい」
どうして今日はこんなにも楽しめないんだろう?
その答えが分かった気がした。
私は忍と再会して、でも実は男の子で。
もう離れたくなって思ったから結婚した。
背伸びして大人らしく見せてるだけで、私は友達としての忍を手放したくないだけ。
楽しい。
結婚できて嬉しい。
でも忍の人生を無責任にもらってしまった、そう思ってしまうんだ。
「そうだ。漫画コーナーでさ、好きな漫画紹介し合おう!」
忍、ごめん。
けど私、どうしたらいい?
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