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暗雲立ち込める空の元……
何人たりとも寄せ付けぬ難所、ワゥララート山の頂に聳え立つのは、巨大な城……
人類の美的感覚では計り知れぬ、前衛的かつ複雑怪奇な構造体をもつ異形の城は、圧倒的な威圧感を以て主たる魔王の威光を世界に知らしめんばかりである……
そんな城の中枢にしてシンボルでもある謁見の間――
仰々しい玉座に腰を下ろし、瞑想に浸るは異形の青年……
頭部の両側から歪んだ角、薄紫の皮膚、左右別々の色を示す瞳……
禍々しくも美しいその存在こそ、この城の主たる魔王……
人類の不倶戴天の敵である魔族の頂点である。
いや、[魔王]という尊称は訂正せねばなるまい……
この存在こそ、あらゆる魔族を統べる魔王の中の魔王……
その名も、〈魔皇帝ゾルダーク〉――
広い空間の両脇には、不気味な姿を持つ魔族の臣下、兵士が恭しく整列していた……
巨大な両開きの扉が開き、謁見の間に現れたるは、その腹心である悪魔伯爵ライリッヒ……
礼服に身を包み、恭しく頭を下げた後……
「おそれながら……我らが長にして究極の存在であらせられる魔皇帝ゾルダーク陛下に申し上げます……」
臣下一同の眼がライリッヒに向けられる。
そして、眉目秀麗な悪魔伯爵は彼らが最も恐れていたことを告げた。
「ついに勇者一行がこの城の場所を突き止めた、との知らせが入ってまいりました」
――勇者!!
宿敵たる存在、人間側の[切札]の名を耳にした魔皇帝は眼を開き、細い顔立ちに見合わぬ巨体をゆらりと、玉座から立ち上がらせて……
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