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 人混みが途切れた脇道の手前で、陸に抱き締められた。  空は夕暮れ、トワイライト。ここは内陸の神社だから海も灯台もない。  間もなく夜が訪れる、そうしたら家に帰らなくちゃならないのだけど。  子供の頃、酉の市の日だけは夜遊びが許された。  ワクワクしながら友達と待ち合わせ、微々たるお小遣いを握り締めたこの参道は今、夜を迎えた。  隣りには陸がいて、缶コーヒーを飲みながら。  本当はこれを機に思い出してほしかったのだろう、全てを。  だけど葵には思い出したくない過去があり、その呪縛は重い。 「ほんとごめん、陸大好き」  初めてじゃない告白と思う、だけど自分の言葉で伝えたかった。  ここからもう一度、始めるのだ。陸は突然の告白を受け、驚いた顔をした。 「記憶をなくしても、生まれ変わっても。きっと何度でも陸に恋をする」  断片的にでもいい、思い出すことを切に願った。
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