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クラス担任は二十代後半。
大人の色気といいますか、渋さと表現するのが正しいのか。
とにかくカッコいい!
「先生、ここ教えてほしいです」
「私はここ、詳しく聞きたい」
担任の周りには今日も生徒たちが密集していて、白石葵はそんな光景に幻滅している。
「もっと若いの探そうよ」
「おや、葵は。お若いのがお好みで」
ここは女子高だから、こうして男の先生に人気が集中するのも解らなくない。
私立のためか年齢層高めの先生が多く、若者が注目される。けどさ。
「分別なさすぎじゃない、ハイエナか」
確かに他の先生と比べれば、加藤先生はカッコいい。
けど他より若いってだけ、世に出れば男前はもっと沢山いる。
「とかいって葵、本当は加藤先生のこと」
ないない、と片手で否定する。親友の夕菜もまた先生のファンだ。
被ると面倒くさいから、興味ない素振りを続けている。
でも本心は葵もファン。去年も今年も担任で、色々な相談に乗ってくれた。
職業柄、先生が生徒の相談に乗るのは当たりだろう。
だがその大人なんだけど、それとなく葵目線も理解しようとする先生が素敵だと思った。
先生と、どうにかなりたいわけじゃない。そんなの無理だから。
先生と自分では住む世界も年齢も、全てがかけ離れている。
「白石、今日当番だろう。ちょっと来て」
先生が密集地帯から抜け出した。
「ええ、白石さん? お手伝いなら私たちがします」
「そうです、ここは私が」
クラスメイトたちは口々に不満を漏らすが。
「今度また、お願いするよ」
先生の爽やかな笑顔に見とれた。
「ま、いっか。白石さんだし」
「そうそう、白石さんだし」
どんな基準か知らないが、葵は警戒されていない。
恐らくその理由はただひとつ、加藤先生を好きでないと、ちゃんと公言しているからだ。
「白石さん、ちゃんと先生を手伝ってあげてね」
「ご迷惑おかけしたら、ただじゃ済まさないんだから」
多くの助言を受ける葵を、廊下で先生は今か今かと待っていた。
「先生、お手伝いってなんですか」
「実は何もないんだけど、あのままだと次の授業に響きそうだったから」
「酷い先生、私をダシに使ったのね」
先生は笑顔で否定したが、まあ実際それが本心だろう。
「いつも白石には助かっています。
サバサバして、割り切った物の考え方で。ほんと心が許せるな」
そう思ってもらえるのは嬉しいが、本気にしてしまうとタチが悪いのでやめてほしい。
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