馬之助と熊

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 もう、すっかり熊はその気になってしまって、目だけで空を見上げながら、何かを数えはじめました。 「どれだけくれる? 」 「あなたがのぞむだけ。今回はいかほどになさいますか? 」 「何? 『』とは、そりゃあどういうこった? 」 「食べ物など、いつまでも置いておけるものではないでしょう? 今食べられる分だけ、まずは明日の朝にお持ちいたします。その後は、なくなったらまた、必要(ひつよう)な分だけ私に申しつけ下さいましたら、何度でもどれだけでもお届けいたします」  この言葉を聞いて、熊はもう、うちょうてんになってしまって、今にも小おどりしそうなほどによろこびました。 「なぁるほどなぁ! おめえは人間にはめずらしく頭がいいだなぁ。確かに食べられねぇほどもらっても、俺一人じゃぁ食べ切れねぇからな」  馬之助さんは、もう、一歩も二歩も前にふみ出て、続きを()かします。 「さあ、いかほどごいりようなのですか? さあ」 「そうさなぁ、なら、まずは『なんば』をざるに山もりと、『なんきん』を(とお)ほどだ。それから、はちみつを(つぼ)いっぱいに入れてくれりゃあ、今、この場は、おめえを見のがしてやってもいいだ」  馬之助さんは『しめた! 』と思って、心の中ではばんざいしたい気分でしたが、熊にはなるべく()どられないように、顔色一つかえずに話すのです。 「では決まりですね。私はさっそく、村にもどって村の人たちと話をつけてくるとします」 「何? おめえ、『ふき』と『やまもも』はどうする? 」
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