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「今では、その『お金』を預かるのも道具がやります。『銀行』に行って、機械にお金を入れるだけです」
馬之助さんは、ドキドキしながらも、熊の顔色をよみとりながら、今度は声色をかえて、わざと少し恐ろしいようにヒソヒソ声で
「近ごろでは、罰を与えるのもボタン一つで機械がやってくれるのだそうです」
と言いました。
熊は少しだけ言葉につまりましたが、それでもまたすぐに
「そんなものぁ、爪でひっかいちまえばいいのさ。
俺に言ってくれりゃぁ、いくらでもやってやるさ」
と、偉ぶって、いつもよりも大きな声で言いました。
「それはそれは。また今度、お願いします」
さて、一生懸命お話をつづけていた馬之助さんですが、もう、これ以上はいくら考えても、さっきみたいにスラスラとお話をつづけることができなくなってしまって、背中にはびっしょりと冷や汗をかいています。
熊は、そんな馬之助さんのようすにはちっとも気づかないで、でもさっきとは違って少しだけ穏やかな口調になって、続けて馬之助さんに話しかけます。
「で? その人間が、一体、何の用で山に来たっつうんだ? 」
馬之助さんは『助かった』と思って、また頭の中でグルグルと考えをめぐらせます。
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