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ダンジョンバトル
ダンジョンバトル。
それは古くから伝わる魔王軍の決闘だ。
己の領土であるダンジョンをかけての戦いである。
「むむむ、無理ですよー! 負けてしまったらわたし達行き場所を無くしちゃいますよー!?」
「そうよそうよ! おバカマスターってば何考えてんの!?」
「あー、うるさいうるさい! 無理でもなんでもやるんだよ!」
マーシャとリアの非難に手を振り、イェルはふん! と鼻を鳴らした。
「いいか? アイツらは俺らを舐めてる。舐めまくってる。いや、舐めて溶かしてどろっどろの液体にして蜂蜜と混ぜて舐めるくらいに舐められてる。それが狙い目だ!」
「油断を突くおつもりですかな?」
ハーマンの言葉にイェルは頷き、それしかないだろ、と呟いた。
「とにかく、お前らは俺の指示通りに動け。他の事に気を回すな。言われた事をしろ」
「えっらそー! 何様よ!」
「決まってるだろ」
イェルはリアに笑ってみせた。
「ダンジョンマスター様だ」
イェルが挑戦状を吹っ掛けたのはオークの魔人、グェガルだった。
「よく来たな、羽なし」
羽なし。それはイェルを侮蔑する言葉である。
誇り高き吸血鬼の中で、イェルは羽を持たずに産まれてきた。
しかし、イェルはそれを補って余りある程の魔力を持っていたのだが、今はそれもない。
だが嘲りの視線を受けてもイェルは顔色ひとつ変えずに沈黙を貫くだけだった。
「チッ! 腰抜けが。まあいい、こちらが勝ったら約束は守ってもらうぞ」
「わかってる。俺が負けたら俺の部下はお前にくれてやる」
「はあ!?」
「ええ!?」
イェルの発言にリアとマーシャが目を剥いてイェルを見た。
「ちょっと! なに勝手な約束してんのよ!」
「そそそ、そうですよ!!」
「だー!! うるさい! 勝てばいい話だ!」
二人の抗議を一蹴し、イェルはニヤついた笑みを浮かべるグェガルを見据える。
「始めようーーバトルをな!」
こうして、魔王軍一の弱小ダンジョンマスターの戦いが始まった。
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