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オークの魔人、グェガルは倒れ伏す部下達を見下ろし、ため息をつく。
「女に弱いのが我らの弱点だな。この程度の奴らにいいようにされおって」
手に持つ巨大な棍棒を一振り、空気を振るわせグェガルはイェルを見た。蟻を見るような、無関心なその視線を見返し、イェルは口の端を上げる。
「さあて。これで後はお前を倒せば終わりだな」
「くだらん。昔のお前ならともかく、魔力を失ったお前など人以下よ」
とっとと終わらせてもらう。
無感動に呟き、グェガルは棍棒を振り下ろした。
その速さは重さにみあわず。鋭く重い一撃であった。
しかし。
「むっ!?」
そこに、イェルは居ない。彼は軽やかに身を翻し、手にした剣を一閃させた。
血飛沫と共に巨大なグェガルの腕が宙に飛ぶ。
「魔力がなければ、体で戦えばいいのさ」
単純な、だけどそれを行うにはとてつもない力が必要とされる行為。
人間達から教わった真実。
魔力を失ってこのかた、何千何万と繰り返し修行してきた。
血反吐を吐き、習得してきた。
ひたすらに剣を振るってきた。
この日のために。
ーーイェルの技が、魔人を越えた。
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