ダンジョンバトル

3/3
前へ
/5ページ
次へ
 オークの魔人、グェガルは倒れ伏す部下達を見下ろし、ため息をつく。 「女に弱いのが我らの弱点だな。この程度の奴らにいいようにされおって」  手に持つ巨大な棍棒を一振り、空気を振るわせグェガルはイェルを見た。蟻を見るような、無関心なその視線を見返し、イェルは口の端を上げる。 「さあて。これで後はお前を倒せば終わりだな」 「くだらん。昔のお前ならともかく、魔力を失ったお前など人以下よ」  とっとと終わらせてもらう。  無感動に呟き、グェガルは棍棒を振り下ろした。  その速さは重さにみあわず。鋭く重い一撃であった。  しかし。 「むっ!?」  そこに、イェルは居ない。彼は軽やかに身を翻し、手にした剣を一閃させた。  血飛沫と共に巨大なグェガルの腕が宙に飛ぶ。 「魔力がなければ、体で戦えばいいのさ」  単純な、だけどそれを行うにはとてつもない力が必要とされる行為。  人間達から教わった真実。  魔力を失ってこのかた、何千何万と繰り返し修行してきた。  血反吐を吐き、習得してきた。  ひたすらに剣を振るってきた。  この日のために。  ーーイェルの技が、魔人を越えた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加