招かれざる来訪者

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招かれざる来訪者

 ソレは、招かれざる来訪者。 「魔神に邪神に神殺し……世界を破壊して数多の魂を巻き込んだ連中が、許されていいわけないよねえ?」  まるで感情をおおい隠すかのように、お面のように貼り付けたような笑顔を浮かべるソレが瞳に宿すのは、禍々しく淀み渦巻く負の感情。怒り、憎しみ、悲しみ、絶望、嫉妬、嘲り……混ざりあい、殺意すら孕んで、ほの暗いそれらの感情とともに対峙している彼らへと殺気をぶつけてくる。 「破壊、リセット、ループ……命も魂も、道具としか見ていない。神も人間も」  まるでゲーム感覚で。ツクリモノの世界ならば、リセットしようが破壊しようが構わないとでも言わんばかりに。そこに生きるモノの存在など、描きたい物語を構成する駒にすぎないのだと言わんばかりに。 「世界の材料として消費された魂が紡げずに飲み込んだ言葉も、心も、命さえも。歪めて、壊して、思い通りにならないからリセット? フザケルナ」  かつては、どこかの世界で生まれた存在で。  今では、数多の世界の残骸を取り込んで変質したナニカ。 「いざ自分がその物語の世界で生きることになって、その悲惨さに後悔するような話もテンプレ化してきたけどさぁ、オレからすりゃ、そもそもそんな救いがないような悲惨な運命を与えたソイツらの自業自得だし?」  ころころと気配が変化している。このナニカを構成しているモノは、一つ二つどころではないと、対峙している彼らもすぐに察した。 「ツクリモノだから、悲惨な運命を与えて狂わせられるんだろう? 自分自身が体験するわけじゃねえから……簡単に壊せるんだろうよ」  ソレが何か。この場に答えを知る者はいなかった。  けれども、このナニカを放置してはならないことだけは理解する。 「魔神も邪神も、許して、受け入れてさ」  このナニカは、生命体ではない。 「ソイツらに消されて塵芥となった魂の存在なんて無かったことにして……忘れていくんだろうよ。この生ぬるい世界で」  魔神や邪神の名を出してはいるが、その怒りの対象は、それらではないことも。
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