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終章
一夜明けて戻った頃には、残骸しか残されていなかった。
一縷の願いも簡単に打ち砕かれる。砂に埋もれた木箱。風に煽られる干し草。少年の遺体は、指一本たりとも残されていなかった。どうやら化け物に丸ごと喰われたらしい。また誰かの犠牲で、私だけ生き残ってしまった。
──生きねば。
親子の骸が入ったナップザックを拾い上げ、ゆっくりと背負う。そうして積荷入れの残骸の中から紐切れを見つけると、翡翠の小さな穴に通し、首にかけた。また新しく、背負うべき遺物が増えてしまった。
ここからが、正念場だ。両頬を軽く叩きながら、私は新たなる一歩を踏み出す。砂塵と乱反射する日光に拒まれても尚、私は絶対に歩みを止めない。たとえ骸になろうと、だ。
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