死神のうしろ

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灯の目の前に青年が1人いた。 姿をみる様子、幼さを感じたから、まだ10代で高校生くらいの男子だろうと灯は思った。 灯に見られ照れくさそうに頬を染めていた後ろくんは、顔をぐっと前に出すとそのまま灯の唇にキスをする。 それを灯は抵抗なく受け入れる。 今日もこの時間がやってきた。と、灯は思うだけだった。 後ろくんが指先で灯の顎をちょんと下に向けて押すと、口を開くよう促されていると悟った灯は顎の力を緩める。すると、ぬるりと生温かく濡れた後ろくんの舌が灯の口の中に入り込む。そのままいつものように灯は自分の舌も絡めると、後ろくんは悩ましげに眉をしかめる。 そのまま後ろくんは灯を押し倒し、さらに深い口づけをする。お互いの歯や頬肉に舌が這う。 自分に跨がる彼の背後に映る景色は霞んで見えない。ここがどこかもわからない。 わかるのは、心地よい空間にふわふわと浮かびながら素性のしらない少年と抱き合っているということ。 夢。 後ろくんが唇を離すと、灯の視界いっぱいに彼の表情が広がる。気分良さそうに酔いしれた顔をしている。 よくみると、お互いに衣服は身につけていない。 後ろくんはまた灯に顔を寄せると、彼の顔中を愛おしそうに優しくキスを落としていく。徐々に下に下がり、首筋を1度キスすると、しっとりと舐め上げる。 後ろくんの厭らしく口で肌を撫でる感覚に声を漏らし、後ろくんの肩を押す灯。 その様子を見て後ろくんは肩を押す灯の手を取り、手のひらに舌を這わせる。 指と指の間を舐め、指先を口に含むと、灯は手を引っ込めようとするが、癖になる擽ったさに制止するのが勿体無く思えてしまう。 手から舌を離すと後ろくんは灯の胸に乗り、乳首を指先で転がすように弄び始める。 肩を震わせ、可愛らしい声を漏らした灯。 後ろくんは企むような顔を浮かべると、弄っていた乳首を唇で食み、もう片方の乳首を指先で捻るようにして摘まんだ。 体をよじり、後ろくんの頭に手を置く灯。後ろくんは乳首を舐めると唾液が弾く音を立てながら吸い始め、両乳首に刺激を加える。 胸の先から広がる卑猥な感触。もっと欲しい、と灯は乳首を突き出すように体を上に向けて反らせる。後ろくんの口内と手中で乳首が固くなっていく。 顔を反らす灯。 後ろくんが膝を彼の下半身を撫でる。腹部に固くなった彼の局部が辺りニヤリと笑う。片手で彼の熱帯びた局部を愛撫する。 涙を浮かべる灯の顔をうっとりと見上げながら、後ろは乳首をあまがみし、彼の局部を手の中で擦り、鈴口に爪を立てた。 びくびく腰を震わせた灯。鈴口から白濁が飛び出したのが見え、恥ずかしさで目をぎゅっとつぶった。 1度体を起こした後ろくんは自分の指を灯の口に入れ唾液を絡ませる。その指を灯の後穴に押し入れた。 今ではもう異物感を感じることはなかった。ただ入ってくる感覚が心地よかった。 この青年は灯が 青年が灯の身体に自分の身体を密着させると灯の後孔から身体の内へと熱い物体が押入る感覚が押し寄せてはひいていく。うっすら目を開け、彼に向けると彼が自分の上で前後に身体を揺らしているのが見えた。彼の熱が下腹部内側を通じて全身から脳へと伝わる。 身体の中で熱がうねると灯は悩まし気な声をとぎれとぎれに漏らす。 しばらくはゆっくりと身体をゆらしていた彼だったが両手を着き直すと一気に激しく灯の腹部を何度も突き上げた。彼の熱は灯の性感帯を攻める。身体が熱い。快感で額が割れそうになる。内側から擦られる性感帯。局部の痛み。それも快感を増す要因でしかなかった。 突然全身に電流が走ると、一気に灯は背中をそらすと射精した。 灯自身の鈴口から白濁が漏れたのが見えた次の瞬間には眼前に自分のベッドのシーツが映った。部屋の明るさを考え見て自分が朝起きたんだなあと理解した灯。 また、とんでもない夢を見てしまった・・・。と、恥ずかしさを隠すようにうつ伏せの身体をもぞもぞ動かしてシーツに顔を埋めた。身体を起こすために酸素を入れ、吐き出す。 空気が入り、膨らんだ身体の節々に鈍痛が浮き立つ。 「筋肉痛・・・」 昨日は特に激しい運動をしたわけではない。したといえば夢の中。 これじゃあまるで、 「マジでヤった後みたいじゃんか…」 布団の中で灯は愕然と自分の顔を両手で隠した。その部屋の宙でどうやら眠っている様子なのか、後ろくんは身体を横にした体勢で目を閉じていた。 あだ名は”死神”。 関わった人たちが何かしらの事故や死、不幸になることから白波灯は周りからそう呼ばれていた。 灯自身もそのことはよく理解していたからこそ、人との関わりは避けて生活したいと願っているのだが、なぜだか人が寄ってきてしまう。 それは良い人も悪い人も幽霊も含めてであった。 学校の先生を目指す灯は大学では教育を学んでいる。 教師を目指すため、塾講師のアルバイトに加え、社会勉強としてコンビニアルバイトの2つを掛け持ちしている。 今日も朝早くからの講義に参加しているが、連日のアルバイトに加え、体感型のセックスの夢を見せられたお陰で眠りも浅かったのかした疲れもあってすでにまぶたが重たい。 先日、居眠りをしてしまった際に講義を担当する先生に「勉強しに大学に来てるんだろうが。バイトなんてやめちまえ」とこっぴどく叱られた灯。 生徒にそうしてもらいたいなら学費をくれと言いたくもなったが、きっと先生はお金に困らない環境で育ったのだろう、そういう人にお金がない環境で育った人間の行動なんて理解できなくて当然だと理解されるのは諦めた灯。 「言わせておけばいいのさ、」 机に頬杖をつき、寝ぼけていた灯の唇がかってに動くと、周囲に座っていた講義に来ている生徒が目を丸くして灯の方を見た。 その様子を灯の頭上でふわふわと寝たふりをして浮いていたうしろが微笑ましそうに笑う。 講義が終わると、灯の元に1人の学生がやってくる。 その姿を見た後ろくんは不満そうに眉間にしわを寄せる。 「おはよう、灯」 「ああ、マーボーおはよう」 マーボーと呼ばれた彼は灯と同じ学科で学ぶ学生で、灯の友人である。 灯はマーボーの顔を見ると、嬉しそうに笑う。 「また笑ってる。俺の顔そんなに面白い?」 マーボーは不思議そうに首をかしげる。 関わる人間が不幸になってしまうことから、人と関わることは避けている灯だが、この大学で出会ったマーボーとあだ名を呼ばれる青年だけは灯のそばにいても不幸になることがなかった。ようやくできた安心して話ができる友人。灯はマーボーに声をかけられるといつも嬉しくてつい笑顔がこぼれてしまう。 「そういや、寝言言ってたね」 マーボーが笑いながら言う。 「え、うそ」 灯は口元を手で抑える。 「何言ってるかまではわかんなかったけど」 「恥ず…」 「バイト?また」 「バイトもあるけど、まあ、色々…」 年下の男とセックスしている夢を見て夢精までしているなんて。この世の全ての拷問を受けることになったとしても言わない、そう思った灯は強く口をつぐんだ。 灯が言いたくなさそうにしてるのを悟ったのか、マーボーはそれ以上聞かなかった。代わりに「学食行こう?」とマーボーは灯に言った。 大学内の食堂に着くとすでに生徒たちで込み合っていた。 「灯、今日は何か買うの?」 苦学生の灯。いつもお昼は食べないか、 「買うとしても惣菜かな?野菜とか。金ないし」 「じゃあ、今日もおにぎり?」 「いや、今日はあてがあるんだ」 灯は得意気に笑う。 食堂の出入り口付近には掲示板があり、学校外からの宣伝ポスターがはられる。ちょうどマーボーとその前にさしかかったとき、灯はそこに目をやった。マーボーもつられて灯の視線の先に目をやるとそこには赤十字の献血ポスターがはられていた。 献血してくれた学生さんにはカップラーメンをプレゼントします。 唖然とした顔でポスターを見つめるマーボー。反対に灯はポスターに映るカップ麺に釘付けだった。 「飯のために血を売るのか、灯」 「違うよ。今日を生き抜くためさ」 そう言って灯はマーボーに向けてガッツポーズをする。 「マーボーは先に席とってて。おれ、献血行ってくる」 「えっ、今から?」 目を丸くしたマーボーを置いて、灯は食堂をあとにしてた。 数十分もしないうちに。 窓際のテーブル席にマーボー豆腐丼を注文して座っていたマーボー。そこにカップ焼きそばと、チョコレート、スポーツドリンクを抱えた灯が満足そうな顔をして戻ってきた。 「あれ、早くない?」 マーボーが灯を不思議そうに見返す。 献血をするとなったら待ち人が少々退屈するくらいには待たされるはず。そう思いスマホで動画でも見ようとしていたマーボー。 「俺の血管が細すぎて、献血断られちゃった」 「そんなことあるんだ」 「でも、カップ麺は無事手に入りました」 灯は嬉しそうに笑った。 席に着くと、チョコレートをひとつまみ口にいれた灯。それはそれは大事そうに噛みしめる。 「そう言えば」とマーボーがふと、口を開き、灯がマーボーのほうに顔を向ける。 「ここの大学の先生が事故ったって聞いた?」 「え?」 「この前、灯のことを怒鳴ってた先生」 マーボーが言うのはきっと、バイトなんてやめちまえと言った人物だろうと灯は思った。 「ほんと?それ」 理解できないという風に眉を潜めて疑う灯。 「大学からのメール見てない?だから、今日、その先生の講義は休校になったんだ」 マーボーが箸を持っていない方の手でスマホをトントンと操作し、画面を灯の前に向ける。メールでA先生が諸事情により…と内容が綴られていた。 「そうなんだ、でも、事故って書いてないね」 「この人、大学の近くで事故にあったらしいから見た人が学校で噂してた」 「そうだったんだ。早く身体がよくなるといいなあ」 「うん、そうだね」 昔から自分に関わった人間には不幸が起こりやすい。今回もそのせいだろうか。灯はうつむき重苦しくため息をつく。それを見たマーボーは灯の肩に手を置く。 「たまたまだって」 「でも…」 「灯は気にしすぎなんだよ」 マーボーがにこやかに笑う。灯をそれをみて「うん」と悲しげだが少し安心した様子で返事を返した。
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