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勇者像の結界
――この地が魔王の手に落ちて、500年が経過しようとしている。
かつての人里は滅ぼされ、魔族が栄華を極めている。そのような現状でも人間が滅びずにいられるのは、聖なる「勇者の加護」があってこそだ。
人間の大半が暮らす、ここ王都には、1000年前魔王を滅ぼした勇者が遺したと言い伝わる「勇者像」が安置されている。
これはただの偶像などではなく、魔物を退ける「聖域結界」を纏い、王都全体にその結界を展開している、人類最後の砦とも言える至宝であった。
「ゲハハハハッ! 美味そうなニンゲン、みぃーつけたッ!!!」
今まさに、飛行魔獣が空から王都に侵入しようとしている。
「ニンゲン、いただきまー……ん?」
勢いよく飛び込んでこようとした魔獣は、聖域結界に触れた途端、塵となって消えてしまった。
勇者像から展開される結界の力は強大で、このような下々の魔物のみならず、魔王ですら侵入することが出来ない程である。
サラサラと降り注ぐ魔物の塵を手のひらに受け止めた男が、上空を見上げながら目を丸くして呟いた。
「……この結界で攻めたら、魔王倒せるんじゃね?」
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