開かない窓

2/3
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「え、引っ越す?」 「うん」  いつものように窓を開いてにこりと笑う彼。いつもと違ったのは、笑顔がどこか作り物みたいに思えたこと。 「寂しくなるね」 「うん」  言葉では軽く言うけど、相当にショックを受けていた。  この窓が開かなくなる。そんな日が来るなんて。 「いつ引っ越すの?」 「明後日」 「何でそんな急なの? 仲良しなのに?」 「……仲良しだと思ってるから、言いづらくて」  共通の認識で嬉しい反面、やっぱり早く言ってほしかったと思う。 「もう戻ってこない?」 「そうだね。もうここには戻ってこないかもね」  簡単に言ってくれちゃって。 「そう」 「うん」  私はそれ以上話したくなくて、窓を閉めた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!