フラワーズ・マンション

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『えっ、もしかして……河田君? うわあ、大人になったね』 「まさか!あの映画館にいた花子さん!? 懐かしいなあそうだよ河田だよ!今は僕、ここの店長なんだよ!」 何と、あそこは従業員用のトイレ。 レッドちゃんはアルカリの店長と知り合いだったのか。 『わたしの事覚えててくれたのね。嬉しい』 「忘れる訳ないさ。 学生時代、僕は気が弱くていじめられっこだったから、いつも一人で映画ばかり観ていた。 みんなに見つからない様に、隣の夢咲市まで出かけてさ。 こんな田舎から早く飛び出して、映画の舞台みたいな大都会に引っ越したいってずっと夢見てた。 そんな話を聞いてくれたのは花子さんだけだったもの」 店長さんは四十歳くらいだろうか。貫禄ただようスーツ姿、意思の強そうな渋い顔立ちは、昔はいじめられていたとはとても思えない。 『あの映画館なくなっちゃったんだよ。わたし、いつかまた河田君が来てくれると思って待ってたのに』 「ごめんね。でも僕は念願の都会で頑張ったよ。こんな大きな店を任せてもらえる様になったんだ。 そうだ、今はどこにいるの?この店に来ないかい?」 おやおや、これは出番かな? 私はそっとうちわを構える。 『そうだね。それもいいな。 でも河田君、一つだけおしえて。 君はこの町を、ふるさとの事を。 今はどう思ってるの?』
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