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社交界デビュー
「『氷の公女様』だって!ふざけるな!」
馬車の中では、さっきからローレンスお兄様がご立腹でした
「お兄様、わたくしは全然気にしておりませんわ」
「アイラ、君は本当にできた妹だ」
ローレンスお兄様がわたしくしの手を握りしめました
本当は眠れない程、気にしていました
笑顔が作れないのは、緊張の余り顔が強ばってしまうのです
何度かローレンスお兄様に連れられ、パーティーに参加したけれど、慣れるどころかドンドン人見知りがひどくなり、挙げ句に『氷の公女様』なんてあだ名まで付けられてしまった
おまけに、こんなに頑張ってパーティーに参加しているのにフェリックス王子には1度もあえないなんて…
「アイラ、大丈夫?僕がついているからね」
わたしくしの緊張をほぐそうと、お兄様が手を優しく握ってくれました
「ありがとうございます、お兄様 」
ローレンスお兄様は本当に優しい
家族の中でも1番わたしくしを大切にしてくれていました
小さな頃からずっと変わらず、わたしくしの1番の理解者であり、騎士様
そんなローレンスお兄様も、先月ご婚約が決まり、わたしくしの家での立場も なかなか厳しくなってきました
ルーカスお兄様は3年前に結婚し、今年男の子が産まれ、ヨーク家は安泰
ローレンスお兄様もご婚約が決まり、来年にはご結婚されヨーク家を出ていかれる
そして残されたのは、嫁の貰い手のないコミ障のわたくし
このままでは、ヨーク家のお荷物、小姑 、そう『氷の小姑様』と呼ばれかねない!
何としてでも、チョコレート王子…いや、フェリックス王子のハートをGETしなくては!!
その為に10年間、苦労に苦労を重ね、王子のお嫁さんにふさわしいレディになるため精進してきたんですもの
「アイラ、着いたようだよ」
お兄様が馬車の窓から外を覗いて言いました
どきーーーーん!!!
や、ヤバイ!
もう、緊張してきた!
「大丈夫かい?アイラ!顔色が悪いようだが…」
「だ、大丈夫ですわ、お兄様」
そういいながらも、すでに笑顔がひきつってしまった!
しっかりするのよアイラ!
王子と結婚するために、この『社交界デビュー』を成功させなくては!
やるしかない!!
『氷の小姑』なんて、絶体に嫌!!
わたしくしは大きく息を吸い込み、深呼吸すると馬車を降りました
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