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そこには夢にまで見た
「チョコレート王子…」
10年前よりも60センチは背が高くなっただろうか
長身で手足はスラリと長く、昔と変わらず美しく流れるライトグレーの髪を揺らし、髪と同じ色の切れ長の瞳、男性とは思えない長い睫毛、鼻筋の通った高い鼻、少し微笑んでいる形の良い唇、細身なのに筋肉質なたくましい腕、綺麗な長い指
う、美し過ぎる!!
10年ぶりの再会に震える、わたくしの瞳に飛び込んできました
そして隣には
濃いブロンドの巻き髪、王子と同じライトグレーの瞳、健康的な褐色の肌にほんのり赤く頬を染め愛くるしい笑顔の彼女は、10年前と同じ様に王子の腕に腕を絡め微笑んでいました
曲がかかると、王子は隣の彼女に優しく微笑み
「アンジュ、踊ってくれるかい?」
「ええ、フェリックス様 喜んで」
二人は腕をとり踊り始めました
社交界デビューの初めてのダンスは、王子と踊るって決めていたのに
「アイラ?」
お兄様が心配そうにわたしくしを見つめました
「アイラ嬢 僕と1曲踊ってくれませんか?」
知らない男性にダンスを申込まれましたが、断りの声さえだせませんでした
「失礼、アイラは僕と踊る約束なんだ」
ローレンスお兄様が、わたしくしの手を取ると踊り始めました
「お前、知らないのか?アイラ嬢は必ず1曲目は兄のローレンス様と踊るって決まってるんだよ」
ダンスを申込んだ男性に隣の男性が耳打ちしました
そう、いつも1曲目はローレンスお兄様と踊っていました
何故なら、いつもフェリックス王子がいらっしゃらなかったから
何故、気がつかなかったのかしら
王子に恋人がいたなんて
『婚約者は、いらっしゃらない』とお父様は言っていたけれど
10年前も彼女は王子の隣にいたのに
自分の思い込みの激しさに呆れました
「お兄様…ごめんなさい」
「え?大丈夫かアイラ」
「ダンスの途中だけれど、帰りたい」
真っ青な顔でローレンスお兄様の胸に顔を埋めました
「わかった、もうこの曲終わるから頑張れるか?」
わたしくしは黙ったまま、頷いきました
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