カレー記念日

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「これは、知り合いから聞いた話なんだけどね…」 * 「死体埋めに付き合って欲しい。」 通い慣れたレストランで予約したコースディナーを食べている際、彼女からそう言われた男はまず自分の耳を疑った。彼女の淡々とした口調と深刻な眼差しは、男には目に見えない銃口を突き付けている様にも写った。 彼女とは結婚を見据えた交際をしており、"将来は庭付きの一軒家に住みたい、子供は何人 欲しい"等の話し合いも進んでいただけに衝撃は大きかった。 その日は、彼の方からプロポーズをする予定で あり彼女にとっては両親の結婚記念日であった。 彼女は、盲目の両親と三人暮らし。誰に対しても 明るく気丈に振る舞う彼女の手前、現在の生活に 対してこれといった不満は無い様に見えたが老年の二人の面倒を見ながら自分の生活を同時に営むのは大変だと、ごくたまに愚痴をこぼす事が あった。
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