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『これで、幸せに満ちた安寧の暮らしを送る事が
出来る。私は晴れて自由の身よ!』
結婚した翌年、彼女は子供を授かった。だが、
日の目を見る前に胎内で息絶えてしまった。
事実、初産は流産や死産のケースが多いと言う。
夫は妻を根気良く励まし、家事などを積極的に
手伝い妻の生活を献身的に支えた。
翌年、妻は元気な男の子を出産し大事に育てた。
*
「ねぇお婆ちゃん、これの何処が面白い話なの?
誰も幸せになってないよ。」
スイカを食べ終え、皮に群がる蟻の列を見下ろし
ながら少年は口を尖らせた。
「あら、彼女は幸せだった筈よ。両親亡き後、
実家である庭付きの一軒家を引き取り子宝にも
恵まれたんだから。」
少年は「ふーん」と半分も納得いかぬ様子でうつむくとヒグラシの鳴き始めた庭木を見つめた。
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