カレー記念日

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「スイカ切ったよ、手洗っておいで。」 庭の水道でサッカーボールを洗っていた少年は、 祖母の呼び声に笑顔で振り向き瞳を輝かせた。  手を洗い、縁側に腰掛けた少年はくし型に切ら れた大きなスイカを抱え、甘く瑞々しい果実に かじり付く。 「ねぇお婆ちゃん、何か面白い話して!」 「面白い話?そうねぇ…」 庭の芝生に向かってスイカの種を飛ばす少年に、 祖母は入道雲の浮かぶ空を遠い目で眺めながら 思案を巡らせる。 毎年夏に祖父母宅を訪れる彼の、お決まりの台詞 である。祖父母宅と言っても、祖父は少年が生まれるのと同時期に亡くなっているため六年程前 から祖母がこの庭付きの立派な一軒家を一人で 守っている。 祖母は少年の頭に手を置くと、記憶の引き出し から取っておきのテーマを手繰り寄せた。
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