まさかな宿題

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まさかな宿題

 ある日、宿題が出された。  教室の生徒全員に、先生が言う。 「引っ越しをテーマにして、みんなには小説を書いてみてほしい。引っ越しというテーマに沿えば、文字数制限は、100文字から8000文字。あとは何もかも自由だ」  教室中から、エェーっと嫌そうな声が上がる。  そら当然だ。書いたこともない小説を、いきなり書けと言われても、そもそも小説の定義がよく分からない。  先生は話を続けた。 「この宿題は、みんなの優劣を競うものじゃない。加点要素はないんだが、宿題を提出したら、次のテストが赤点でも、補習は免除としよう。ただし、成績自体の変更はできないぞ。あくまで補習免除というオマケなだけだ」  教室中から感じられるのは、前向きなやる気じゃなかった。保険として宿題やってやるかという諦めだ。  私も同様、保険をかけておくことに後ろ向きな肯定を否定できない。  それにしたって、小説か⋯⋯。  引っ越し経験談じゃダメなのかな。  起承転結がないと、物語とは呼べないのかな。  ま、とりあえずやってみるか。
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