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11 芽生え
遥か彼方のどこかで、島宇宙どうしの衝突が起こった。
二千億個以上の星同士が、無軌道に衝突し合う途轍もない現象だ。
しかし地球のある天の川銀河には、何の影響もないはずだった。
そこはあまりに遠く離れていたからだ。
最後の一人が睡りについた瞬間、額に生えていた木の芽状の突起物に変化が表われた。
その芽は瞬く間に形状を変える。
芽は子房となり、先端は冠毛のような形状となって行く。
まるでタンポポの種のようだ。
そうして世界中のそれは、一斉に額から離れ抜け空中へと飛散する。
みるみる上空へと昇り、成層圏を抜け宇宙空間へまで達した。
七十五億五千万以上の種子が、地球を遥かに見降ろす宇宙空間でひと塊となった。
その種子の塊は、まるで一つの意思でも持っているかのように地球から離れて行く。
いま月の横を通過しようとした刹那、青く美しい奇跡の母星〝地球〟に最悪の事態が起こった。
地球の三分の二程の大きさの惑星が突然現れ、瞬時に衝突してしまったのだ。
眩いばかりの光にあたりが包まれた。
その閃光が消えた後、地球があったはずの空間にはなにも存在していなかった。
島宇宙どうしの衝突の中で、起こりえないことが発生していた。
あまりのエネルギーのぶつかり合いのためなのか、それとも不可能に近い確率の偶然の賜なのか〝ワームホール〟が一瞬だけ出来てしまったのだ。
それがそこに存在したのは、時間で言うと一秒の数億分の一という単位だった。
そこへ周りの星々の衝撃で刎ね飛ばされた惑星が、どういう具合にか入り込んだのだ。
そしてワームホールの出口にあったのが地球だった。
無限ともいえる空間を持つ宇宙の中で、起こるはずのない偶然がいくつも重なり合い、地球は消滅してしまったのである。
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