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12 ∞ 永き旅立ち
天高く舞い上がりながら、華菜は真吾を感じていた。
母を父を、弟の拓馬を沢田ベーカリーのお爺ちゃんを感じていた。
いやそんな数ではない、七十五億の心を感じていた。
種子となって宇宙へと飛んで行きながら、すべての人間の心はひとつに繋がっていた。
〝ありがとう倉田、お前の初めてのキスもらっちゃって。俺でよかったの?〟
〝ずっと、ずっと好きだったんだもの。あたしシンゴくんの事が好きだったんだもん〟
〝俺も好きだったよ、華菜のこと。子どもの頃からずーっと〟
〝キミたちの先祖はこの事を知っていたんだね、やがてすべての人類が遠く旅立つ日がやって来る事を〟
〝そう、その初めの一人目がわたしたちの息子だった。あたしとあなたの息子、レオでなければならなかったの。こうなることは決まっていたのよ〟
〝いまとなってはそんなことどうでもいい、ボクはキミをただ愛しただけさ。──愛しいロゼ〟
〝一体わたしたちは、どれだけ彷徨うのかしら〟
〝さあね、なん億年、なん百億年。僕らが再び根を下ろす星が見つかるまで〟
種子となって宇宙を彷徨う地球人は、いつの日か安住の地を見つけるのだろうか。
緑の大地に根を下ろし、優しい雨に打たれる日は・・・。
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