未知との遭遇

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 基本的に感情の起伏が乏しく、その上ほとんど顔にも出ない。  そのため何を考えているか分からないと、よく言われてしまう。  そんな僕だけれど、これでもいつになくめちゃくちゃ驚いているわけだが。 「わ、私は何もしてない! 知らない!」  正気に戻ったらしいお姉さんは早口でそれだけ言うと慌てた様子で立ち上がり、そのままヨタヨタしながら逃げていってしまった。  え……。もしかして僕は、殺人事件の目撃者になってしまったのだろうか?  だけどあの女性は、素手で男の頬を叩いただけのように見えた。  それだけで、人間の頭がふっ飛ぶことがあるだろうか?……絶対にないよな。  やや冷静さを取り戻し、警察に通報するかどうか本気で迷っていたら、ド派手な白いスーツに身を包んだ男の体が頭とは逆方向に向かい走って逃げ出した。 「え……? 今の、なに……」  さすがにやっぱりこの状況は、異常過ぎる。いっそ僕もこの場から、逃げ出してもいいだろうか。    その時である。肉体と離れ離れになった男の頭部は、ゲラゲラと笑いながら言った。 「うっわ、サイアク! 俺の体、逃げちゃったし! やっべ、俺大ピンチじゃーん」  えっと……。これホント、どういう状況だよ?  逃げ出すことも、叫ぶこともできず、その場に残された男の頭部をガン見する僕。  するとその金髪の男の頭が、あろうことか僕に向かい語りかけてきた。 「ねぇねぇ、そこのお兄さん。見ての通り、俺は今めちゃくちゃやべぇ状況なのね? だから、すっごく言いづらいんだけどさぁ……。俺のこと拾ってくんない?」
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