未知との遭遇

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未知との遭遇

『亮太。知らない人に話しかけられても、絶対にしゃべっちゃダメよ』  幼い頃に母親から、口が酸っぱくなるくらい言われ続けた言葉。  この年になり彼女の言いつけをちゃんと守っておけばよかったと、今さらながらに僕は心の底から後悔しているところだったりする。 ***  今年の春に大学に入学して、僕は人生初の一人暮らしを満喫中。  多くの大学生がそうであるように、僕も多分に漏れず最近になってアルバイトを始めた。  働いているのは、新宿歌舞伎町近くのコンビニエンスストア。  少し治安が良くない気がしないでもないけれど、普通のコンビニよりちょっと時給がいいのでその誘惑に負けて、僕はここで働くことに決めた。  バイトからの、帰り道。少しでも近道したくて通り抜けようとした路地裏で、僕は世にいう修羅場に出会ってしまった。  そう。ホストらしき金髪碧眼の男が、客と思われるキレイなお姉さんにぶん殴られそうになっているところに遭遇してしまったのだ。  当然僕は見なかったことにしようと思い、最初は彼らのことをスルーしようとしたのだ。  しかし事態はそこで、思わぬ展開を見せる。  なんと殴られた拍子に、金髪男の頭が吹っ飛んだのである。  それから男の頭はくるくると宙を舞い、そのまま地面に打ち付けられたかと思うと、二、三度軽くバウンドした。 「きゃぁぁぁぁぁあっ!?」  悲鳴をあげ、腰を抜かすお姉さん。  そりゃそうだ。こんなB級ホラー映画みたいなことが目の前で起きたら、これが当たり前の反応だと僕も思う。    だけどあまりにも突拍子もない出来事に驚きながらも、僕はただ小さく口を開けることしかできなかった。
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