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「悪の波動を感じない。魔法少女側の勢力かな。変身したら魔法使いになるの? まぁ、どっちでもいっか」
少年から紫の触手のようなものがウネウネと生えてくる。恐ろしいことに触手は俺の身体に木片のようなモノを撃ち込もうとしている。
(見たことある。椎茸の原木に埋め込む”種駒”だ! まさか......)
「可哀想に。絶望に囚われていたら痛みも感じずに怪獣になれるのに。それ、痛くて苦しくて、死んじゃいたいって思うくらい辛いよ」
少年が歪んだ笑みを浮かべる頃、俺は声が枯れるまで叫び続けていた。
(痛い。身体が張り裂けそうだ。破壊したい。破壊しなきゃ。殺す。殺したい。殺したい)
負の感情が増殖するように身体を蝕んでいく。
気がつけば、俺は立派な松茸怪獣になっていた。小学校を蹴り飛ばし、大型ショッピングモールを燃やし尽くして遊んでいる。逃げ惑う人々を踏み潰し、電車を持ち上げて投げ捨てた。
「ゆづるっ! ごめん!」
一度スタパイヤとは戦ったけれど、スタサクラはまだ来ない。
(あれ......紗倉が泣いてる)
“あれは武内さんなんだよ! 倒せないよ......”
“しっかりしてっ! このままじゃゆづるを助けられないよ!”
(違う。俺は......紗倉の力になりたいのに......!)
俺の意識は徐々に呑まれていく。
だけども、俺じゃない俺が何をしたか。俺は全てを見ていた。
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