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⭐︎⭐︎第二話⭐︎この街から引っ越せない!⭐︎⭐︎
「え? なんて言いました?」
「ですから、武内さまは△△で、××××の理由よりこのエスタータウンから転出することが出来かねます」
5月。俺はとりあえず実家に帰ろうと思った。マイナンバーカードで転入の手続きをしようとしてもエラーを吐く。困った俺は市役所に来ていた。
しかし、手続き上のなんらかの理由で俺はこの街から引っ越せないようだった。理由は何度聞いても聞き取れない。
「そんな......」
こんな変な街からは一刻も早く立ち去りたいのに。市役所の椅子で肩を落とす俺に近づく影があった。
「おにーさん、元気ないの?」
小学3年生くらいの少年だ。春なのに白いコートに白い長靴を履いている。マッシュルームカットは似合っているが、白い髪はもしかしたら親の趣味で染められたのかもしれないなと思った。
(小さい子に大人が落ち込む姿を見せるわけにはいかんな)
「いや、もしかしたらこの困難は運命かもしれないからな。兄ちゃん、立ち向かうよ!」
俺は拳でガッツポーズを作る。
大丈夫。俺はカメラマンになるためにどこでも生きていけるようにしたいのだから。
すると少年はすぐに興味を失ったかのように”ふーん。つまんないの”と言って立ち去ってしまった。
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