魔女の記録

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魔女の記録

 私の庭に少年の悪魔がやって来た。今後の研究のために、ここに記録をすることにした。  貴族に似た雰囲気を持つ。背中まである黒髪。羊に似た角が二つ。金色の瞳。術がいくつかかけられており、どれも希少性の高いものだ。傷が癒えないもの。探すためのマーキング。 魔力の制限。時間がかかるほど、幼くなるもの。傷は悪化させないように保ち、幼くなってしまう呪いを解除しておいた。魔界と呼ばれる、サキュバスや吸血鬼などの悪魔が住まう世界の術式そのもので、本当に勉強になった。魔術の世界は広い。  少年のような悪魔は解呪されてから、少しずつ本来の姿に戻って行った。背中が痛い。頭が痛い。全体が痛い。そういう訴えがあった。体熱が高くなっており、魔力に乱れがあった。いくつかのパターンを別の紙に記録した。  好奇心旺盛らしく、庭の植物を見て回ることが多い。魔法にも興味を示しており、簡単なものを教えた。習得の速度が凄まじい。魔法使いとしての名誉を貰ってもおかしくないものだろう。 魔界から来ているようで、少しだけ話を聞くことが出来た。自然が豊富というわけではないみたいだ。魔法薬は土や魔獣が原料となることが多いらしい。サンプルがあれば良かったが、流石に少年は持っていなかった。  魔界からやって来る者は意外に多い。私が知る情報屋の吸血鬼も、魔界で生まれ育っている。興味深い生態があるという話なので、いつかは魔界に行って、調査をしていきたい。  数日後に少年はどこかに行ってしまった。それ以降は会っていない。面倒なことに巻き込まれたという印象しかなかったが、果たして無事なのだろうか。
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