新たな魔王の過去と思い

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新たな魔王の過去と思い

 人が多く住む世界に行ったことがある。いや。逃げたことがある。競争に負け、様々な呪いを受けて、まともに動けなかった。せめて静かで平穏なところで終わりを迎えたい。そう思って、異界の境界線に飛び込んだ。  そこは私が望む世界だった。太陽の光。穏やかな風。生命力あふれる緑。魔界と異なる性質の土。潤してくれる水。ここなら本当に穏やかに寝ることが出来る。そう思っていたら、ある女性に拾われて、助けられた。  魔女と名乗っていた。銀髪で青眼の美しい女性だ。一般のサキュバスよりも魅力的な身体を有している。魔女と名乗るほど、彼女は凄かった。全ての呪いを解いてくれた。見たことのない術式をすんなりと解く。技術は鮮やかだった。  私は魔女と共に水浴びをしていたが、途中から恥ずかしくなった。すべすべとした白い肌。片手で収まらない豊満な胸。それ以外もあるのだが、本当にサキュバスよりも素晴らしいものを持っている。悪魔の男として、興奮して夜にこっそりと一人でやっていた。  知識が豊富で、吸収力が見事なものだった。稚拙な知識を伝えたら、あっという間に推測をしていた。彼女は魔界に興味を示していた。知り合いがいたというのもあるらしいが、魔女という生き物は大体そういうものだそうだ。  数日だけだったが、彼女は優しく接してくれた。対処しようと懸命にやってくれたし、私の話を聞いてくれた。魔女は好奇心旺盛な生き物だから、親切というわけではないと言っていたが……それは違う。  私を救ってくれるだけではなく、強くなる術を教えてくれた。魔女と名乗った女性をパートナーとして迎え入れたい。
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