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 三か月ほど経過した。  残念ながらどう考えても夢っぽいのだが、あまりにも長すぎる夢に、今までの私の生活が実は夢だったのではないか、とすら思い始めてきている私がいる。 「マーガレット、ここの所を教えていただきたいんですが」  フェリスとマーガレットの関係は極めて良好だ。フェリスも相当の努力家であることはマーガレットから見ても分かったらしく、今も図書室でマーガレットがフェリスに勉強を教えている最中である。  そしてお互いに様付けを止めるぐらいには、マーガレットもフェリスを気に入っているようだ。  本来イベントとして起こるはずのフェリスのいじめ関連もすっかりなくなっており、大きな障害も無くフェリスはただ学園生活を楽しんでいるだけの状況。時折マーガレットと仲良くしていることが気にくわない女子学生からのやっかみはあったが、むしろ今は彼女から率先してフェリスを守る側に回っている。この結果も当然なのかもしれない。  イベントと言えば、フェリスは無事に聖女の力を手に入れるダンジョンの一つを既に攻略しているらしい。次の場所の導きがまだないようで、それが来るまでは勉学と魔法の練習に明け暮れているそうな。  なお、意識としては同調している筈なのだが、勉強の内容は、私にはさっぱり意味が分からない。今も意味不明な会話を繰り広げている。二人とも頭良すぎない? 『仕方ないわよ。別世界から来たんでしょう? わたくしが知らない知識も沢山あるわけで。チヒロはチヒロで自分を誇った方が良いと思うわ』 『でもさぁ、マーガレットはこれだけ頭がいいって言うのに、私の無能さをさらけ出されるようで嫌だなぁ』 『仮にチヒロが無能なら、今のわたくしはいなかったわよ。だからそう言う事を言うのはやめて』  かつてデュオ王子はゲームで言っていた。『マーガレットといると疲れるのだ。私のダメな部分をこれでもかと見せつけられる気がして』と。  確かに今私も同じような事を思っている。彼女は才女と言われるだけあり、成績優秀で教養に付いても一流だ。ダンス、音楽と言った淑女の嗜みから、歴史や政治と言った王の政治判断の相談役としての知識、魔法関係の能力についても、学園に在籍する生徒の中で随一と言われている。悪役令嬢としての設定のせいかは分からないが、間違いなくハイスペックである。  ガラリとドアが開けば、そこにいたのは金髪金眼の美丈夫デュオローグ。 「今日もいたのか」 「デュオローグ様! はい。マーガレットに今日も勉強を教えていただいてます。お時間を取らせるのは申し訳ないのですが」 「良いのよフェリス。わたくしの復習にもなるし、聖女であるあなたには色々な知識を持っていていただきたいと思いますし」  デュオローグは、二人が座っている席の近くに腰を下ろしていた。 「あ、フェリス、この辺りはデュオローグ様の方が詳しいわ。さきほどわたくしはあぁ言ったけど、きっとあなたも聞いておいた方が良いわ、ですので、是非とも彼女にもご教授いただけないでしょうか? デュオローグ様」 「……まぁ、マーガレットがそこまで言うなら」  彼女は歴史の一節を指さす。当時東の国は、何を思って西の国に侵攻したか、と言う問いだった。  なお、事情は色々と言うか、私が色々けしかけたおかげで、マーガレットとデュオローグは、こう言ったお願いが出来るくらいには、コミュニケーションを取れるようになっていた。 「歴史書では資源戦争と呼ばれているが――」  デュオローグ王子が語り始めたが、私には眠くなる話でしかない。何かを言っているのは分かるが、私の頭には全く入ってこなかった。
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