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「……あの、デュオローグ様?」 「なんだ?」 「少し、昔話に付き合っていただけますか?」 「……まぁ、少しだけなら」  ざわついていた彼女の心が、一度大きく息を吐くことで少し落ち着いたのを感じた。  彼女の言葉は続く。 「わたくし、かつて弓が得意な男の子に、助けていただいた記憶がありますの。大事な人形を黒猫に取られて、路地裏に迷い込んでしまって。気付けば大人の男の人に背後を取られておりました」 「……」 「わたくし、あの頃は小さかったので、それはそれは大きな男の人が近づいて来て、怖かったんです。それを救ってくれたのが、弓が得意な男の子でした。彼は弓で男達を撃退し、わたくしの手を引いて、颯爽と助けてくれました」 「……それで?」 「なので、わたくし、剣よりも何よりも、弓を上手に扱える男性、と言うのに、影ながら憧れておりますの。確かに世間的には男性は剣を振るえて一人前、と言う認識なのは間違いありません。ですがわたくしの中では、剣以上に弓を使える男性、と言うのは、とても眩しく映るのです」 「……何が言いたい?」 「デュオローグ様。先ほどの腕前、お見事でした。可能であれば、わたくしはあなたの許婚なのです。そのお姿を、デュオローグ様が弓を構えるその姿を、少しでも多く見たいと思うのです。もし可能であれば、次からは、わたくしも一緒に、連れて来ていただけないでしょうか?」  すごっ! 私の予想を遥かに越える継続デートのお誘い! 月に一度来てるから、これが上手く決まればかなり仲良くなるのでは。 「……お前は、私を責めに来たのではないのか?」 「そんなわけございません! わたくしは、あなた様に憧れているのです。責める等とんでもありません。もし責めているように聞こえていたのであれば、それはわたくしの不徳の致す所です。誠に申し訳ありません」  スッと頭を下げる。見えた景色は草の淡い緑。 「……なぜお前が頭を下げる。顔を上げてくれ、マーガレット」 「……デュオローグ様」 「良いだろう。別にカッコいい姿ではないと思うが、それを見たいと思うのを咎める必要もない。好きなだけ見に来ればいいさ」 「ありがとうございます。デュオローグ様」  それから月に一度、マーガレットとデュオローグは、秘密の狩りに出かけるようになった。マーガレットは凄い凄いとデュオローグをほめちぎり、時にはマーガレットがお弁当を用意して、デュオローグの狩りの姿を一日中見ていることもあった。結果として、デュオローグがマーガレットに向ける視線は、随分と温かいものになったように思う。
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