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 およそ半年が経過した。  順調にイベントは進み、聖女の力を解放するためのラストダンジョンに向かう段階までやってきている。  その間、デュオローグ王子とマーガレットの仲は良好。フェリスとの関係も良好なものだ。聖女の力は着々と解放され、残るは聖女の秘宝が眠るダンジョンのみ。ここで、彼女は誰を選ぶのか。それでカップリングのルートが決まる大詰めの段階だ。 「同行者はどうするのですか?」 「あの、マーガレット。お願いできませんか?」 「わたくしですか?」  え? マーガレット? 今までそんな選択肢、出てきたこともなかったのに。そうなるとカップリングはどうなるのだろうか?  とは言え、ここに来て断るのもおかしな話だ。 『いいかしら? チヒロ』 『うん。良いと思うよ』  最早朧げな記憶の中にあるゲームシナリオとも随分違っていて、今後どうなるか全く見当がつかないが、とは言え、悪い結果にならなそうとも思った。 「はい。この学園に来て、随分多くの事を助けていただきました。このダンジョンは辛く厳しいものであるとお伺いしています。ですので、是非とも信頼のおけるマーガレットに、同行をお願いしたく思います」 「分かりましたわ。よろしく、フェリス」 「マーガレットが行くなら、私も行こう」 「僕も同行するよ」  更に手を上げたのは二人。デュオローグ王子と攻略対象キャラの一人、主に彼女の実家である道具屋を発展させることで、カップリングされる商家のイーロンだった。なるほど。今回は、彼が相手になるのかな。いや、気を付けないとここで大逆転されると言う可能性もゼロではない。  少し注意をしておこう。 『マーガレット、聞こえる?』 『どうしたのチヒロ』 『なるべく、デュオローグの近くを歩いてて』 『……何かあるのですか?』 『えぇ、この洞窟、中でがけ崩れが起こるの。その時、離れているとあなただけが独りぼっちになる可能性もあるから』 『分かったわ。後の三人にも伝えておいた方が良いかしら?』  伝えた結果何が起こるかは分からないが、どう頑張っても回避不能なイベントだ。伝えておいていいだろう。 『うん。宜しく』  かくして、ダンジョンの奥へと進んでいく。  言いつけ通り、マーガレットはなるべくデュオローグの近くを歩いており、フェリス達も、何かしら起こるだろう、と言う事で注意して進んでいた。  狼型の黒い魔物が現れ、戦闘していた時の事、突如足元が崩れた。 「な、フェリス!」 「マーガレット!」  崩落する足元。巻き込まれる四人。空中で互いに手を伸ばすフェリスとマーガレットだが、その手は間に落ちて来た落石によって阻まれてしまう。 「マーガレット! 掴まれ!」 「フェリス! こっちに!」  落石の奥、フェリスはイーロンに抱きかかえられ、落下していく。  途中で別の穴に落ちたらしく、落下するマーガレットのすぐ横には、デュオローグの姿があった。 「どれだけ深いんだこの穴は!」 「(ウォータ)!」  相当な勢いで落下している。このままではと思った時、マーガレットが魔法を放ち、大量の水を下方へと放っていた。水がたまり、巨大な水たまりが形成されるのが見えた。 「見えましたわ!」 「くっ! 掴まれマーガレット!」  なるべく衝撃を減らすよう着水。何メートル沈んだか分からなくなった段階で、浮力も利用し、再び上昇する。 「ぷはっ!」  周囲を見まわせば、大きな空洞に大量の水。相当深くまで落っこちてきたらしい。  フェリスは強くなった聖女の力を使えるようになっている。あっちは命に別状はないだろう。 「……流石マーガレットだな。おかげで助かった」 「いえ、フェリスぐらいの力があれば、そのまま浮き上がることも出来たと思いますのに……」 「そんな事は気にしなくて良い。それよりこのままだと冷えるな、少し休もう」  見れば水に沈んでいない部分もある。デュオローグに引き連れられる形で、マーガレットは、一緒に水岸まで移動していた。
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