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水から上がったは良いものの、替えの着替え等用意しているわけもない。だがこのままでは体を冷やしてしまうのも事実。
デュオローグはどこで学んだか、近くにあった石と木を使って簡易的な物干しざおを作り、更に細かな木を集め、火を起こす。
そして、パンツ一枚を残して脱ぎだした。たくましい背筋、無駄のない筋肉質な体が露わになる。脱いだ服は物干しざおにかけられていく。
ってちょっとまって! 確かにベッドシーンはあったけど、画面越しじゃなくてリアルで見ると、ふわぁぁぁぁ!
『ちょっとチヒロ、何悶えてるの!』
『だってだってだってデュオ様の裸がぁぁ!』
「くしゅん!」
マーガレットに怒られた。と言うか興奮のあまり連動を繋げてしまったらしい。ごめんマーガレット。
だが、寒気がするとともに、くしゃみが出る。このままでは間違いなく風邪を引きかねない……。
とは言え、ここで脱ぐ、という選択肢も……。取れない。絶対、取れない。
「大丈夫か、マーガレット?」
「ちょっと冷えただけですから、問題ありません」
「……すまない、マーガレット。このような非常事態だと言うのに、何も用意をしてこなかった」
突如目の前でパンツ一枚で跪く王子。いやいや待って待って。なんかすごい絵面だけどこれ。
「そ、そんな事ありませんわ。準備不足と言う事でしたら、わたくしも同じですもの……」
視線の隅ではずぶ濡れになり、今も体温を奪う服の数々。
正面には、パンツ一枚ながらもたくましい肉体をさらけ出している王子。
「とりあえず、こちらに来ると良い。火の傍であれば、少しは温まることも出来よう」
デュオローグの手に導かれ、焚火の近くに腰掛ける事になる。
とは言え、火が近くなった程度で、このずぶ濡れの服の攻勢が弱まるわけではない。
「くしゅん!」
必死にこらえる寒さとくしゃみ。ちょっとずつだが冷えていく体温。他に準備してきているものは特にない。
「……あの、デュオローグ様」
「なんだ?」
「……もしよろしければ、後ろから抱きしめていただくことは、出来ないでしょうか?」
「……後ろから?」
「はい。その、実際寒いのです。あなたとわたくしは婚約者です。このような時に肌を重ねても、特に問題のある立場ではございません。あ、もちろんお嫌でしたら無理にとは言えないのですが……」
随分攻めたなマーガレット! と思う間もなく、背中を覆う温かい感触。
かかる吐息が首元に、耳元にかかり、ぞくぞくして、不自然に体温が上がる。すぐ近くには推しの顔! 画面越しで見るよりとにかく近い!
切れ長な瞳、気だるげながらも甘い顔立ち。そして何より、優し気な声は、画面越しの推しより遥かに推しすぎる!
「嫌ではないさ。私とマーガレットは婚約者なのだから」
「……ありがとうございます。そして申し訳ございません」
ちょっと興奮してるの私だけ!? 随分マーガレット落ち着いてない!? どうして!?
「どうした?」
「いえ、不謹慎ではありますが、今とても幸せなのです。しかしながら、このような状況でそのような思いを持ってしまって、そして、危機的状況にも関わらず、ずっとこのような状況が続けば良いと思ってしまって……できればこのまま、ずっと離れたくありません。わたくし、今デュオローグ様の温かさを感じて、今までで一番、幸せを感じていますから」
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