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「ぎゃああぁぁぁぁ!」  白い光に包まれていく。温かい。  再び記憶のページが流れる。黒い侵食が晴れていく。黒く塗りつぶされた記憶。黒一色だった記憶の中の顔が、髪が、再び鮮やかな色を取り戻した。  最後のページの黒が晴れ、再び目を開ければ、先ほどまで見ていたダンジョンの風景に、四人の男女の姿と、うずくまる黒い影。 「マーガレット、みんな……」 「そ、そんな! 私が……ぐうぅっ」  苦し気に呻き声を上げる黒の女神。私が彼女に向き直ろうと思った所で、別のカ所から声が聞こえて来た。 「チ、チヒロ?」 「……初めまして、だね。マーガレット。いや、ここはありがとう、と言う方が良いかな?」 「……どっちも嬉しいですわね」 「じゃあ、初めまして。それから助けてくれてありがとう。マーガレット」 「……今までの事に比べたら、大したことありませんわ」 「そっか、それなら……あれ……?」  急に眠くなってきた……。ふらつき、思わずその場に倒れてしまう。  だが、盛大に倒れたはずなのに、痛みはそこまでやってこなかった。 「チヒロ!? チヒロ!?」  急速に薄れる視界、黒くなっていく光景に映る、マーガレットの姿。何故か分からないが、彼女と共に歩めるのは、ここまでだと言う確信があった。 「ごめん、ね。凄く眠くて……きっと、あなたと一緒にいられるのは、ここまで」 「そんな! せっかくチヒロの本当の姿を見れましたのに!」  薄れゆく意識の中、黒い影が何かをしようとしているのが見えた。  黒い影を無意識の中、こちらに引き寄せる。 「な、何を……ぎゃあぁぁぁぁ!」  一度同調した影響かは分からないが、黒い影は断末魔の叫びと共に、私の中に吸収されたようだ。 「なっ! 黒の女神!」 「これ、で……安心、だね」 「そんな! それではチヒロが!」 「……大丈夫、だよ。だって、ずっと一緒に、彼女といたんだから、きっと、なんとかなるよ」 「……そなたは」  金髪の王子が視界の隅に映った。  ありがとう。私の推し。私の大事な友人を、二度と泣かせないでね。 「……デュオローグ王子、マーガレットを、私の友達を、よろしくね」 「……言われるまでもない」 「なら、よかった」 「チヒロ」  ブロンド髪の少女に再び声をかけられる。  長年共に歩んだ彼女に、最後の応援メッセージを送ろう。 「マーガレット、幸せにね。褒め言葉は、最高のほれ薬なんだからね」 「……えぇ、えぇ、覚えておきますわ。だから、チヒロも、わたくしの事を、いつまでも覚えていて、くださいね?」 「……うん。勿論だよ」  だめだ、もう眼を開けていられない。 「ありがとう、マーガレット」 「……ありがとう、チヒロ」  そして私は、意識を手放した。
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