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感情を落ち着かせたらしいマーガレットは、マーガレット様、と彼女を呼ぶ女子生徒達と合流し、授業を粛々と受けていた。
女子生徒達は、マーガレットに命令され、主人公フェリスの物を隠したり、校舎裏に呼び出して暴言罵言を浴びせていた生徒達っぽい。
またマーガレットは、婚約者であるデュオローグと共に授業を受ける機会はほぼない様子だった。学年が違う事も要因としては大きい。一方、学園の中では聖女が新たに入学する、と言う話題で持ちきり。
「ねぇ聞きました? 聖女様がこの学園に入学されるそうですよ?」
「でも平民なんでしょう? どうして女神様は、平民の女なんかを聖女に……」
「しかもデュオローグ王子様御自ら学園も案内されるそうですわ」
「あらいやだ、婚約者のフィオネット伯爵令嬢もいると言うのに」
『わたくしの力がまだ足りていないのでしょうか……。そう、ですわね。ここでうじうじしていても仕方ありません。更に励み、将来の王妃として恥ずかしくない力を、付けていくしかありませんわ。そうすればきっと、デュオローグ様だって……』
マーガレットの心情は、ゲーム内では出てきたことはなかった。
だが、その後の行動を見るに、彼女はかなりの努力家である、と言う事は間違いなさそうだった。
授業の後も魔法の訓練に励み、自室に戻ってお茶の稽古。食事も食べ過ぎず、終わったあとは部屋の専属従者から、領地の状況について報告を聞き。既に日も暮れたと言うのに、手元にランプの灯りを用意し、勉学に励む。
外からは夜の虫の音が聞こえる頃になって、メイドに指示を出し、お風呂に入って、メイドたちに着替えさせられて、今はベッドで横になっている。
とは言え……あの、夢にしてはちょっと長すぎないこれ? そろそろ目が覚めても良いと思うんだけど。
『何が足りないのでしょう……知識? 魔法の腕? いえ、きっと足りないものがあるから、デュオローグ様にお時間を作っていただけないのでしょうね……。今日話をしに来ていただけなかったのも、わたくしに割いている時間が無いから、と言うことなのでしょう……。ですが、どうしたらよいのでしょうか』
あー、マーガレットさん? そんなに頑張らなくてもいいんじゃない? あなたの愛しのデュオ王子は、むしろあなたがそんなに頑張るとさらに遠のいちゃうよ?
ゲームの中で彼が言っていたのだ。
――私は彼女を見ていると劣等感に苛まれるのだ。常に怒られ、何をするにも非の打ち所のない彼女を見ていると、まるでお前が無能だ、と言われているようでな――と。その心の闇をフェリスが包み込むことで、私の推しであるデュオローグ王子は攻略が出来るのだから。
「おやすみなさい……」
悲しみの感情を抱きながら、マーガレットが眠るのを、私はひたすら感じていた。私は全く眠くならないし、夢ならそろそろ起きても良いと思うんだけど、何もおこらないんだけど。マジでどうなってるのこれ?
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