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「えっと、リルちゃんはここで。ポッポちゃんはこっち」
可愛い運送屋さんの歌声と共に、おもちゃの私たちは引っ越しをする。
今まで特等席にいたけど、残念ながら新しい子に譲らないといけないみたい。
私がここに来た時も、前にいた子たちはそう思ったのかな?
私たちの持ち主であるナツミちゃんは、赤ちゃんの時はガラガラ音が鳴るおもちゃや、ぬいぐるみで遊んでいたらしい。だけど次に私たちが来て、その子たちは引っ越ししていった。
だから、次は私たちが譲る番。寂しいけど仕方がないよね。
だってそれは、ナツミちゃんが成長しているってことだから。
お世話用人形である私を迎えてくれたのは、ナツミちゃんがまだ一歳半の時。
「かわいい」と抱きしめてくれて、いっぱい抱っこにおんぶしてくれたね。
ご飯も食べさせてくれ、寝る時は毎日一緒。
幼稚園にまで連れて行ってくれて、おかあさんに怒られちゃったこともあったね。
毎日毎日、とっても幸せだったよ。
だけど、ナツミちゃんはもう四歳。
テレビでリルちゃんを見て、目を輝かせていたの知ってるんだ。
そろそろお世話用人形から、着せ替え人形が欲しくなるころで、お引っ越しが近いだろうなって。
五歳の誕生日にリルちゃんを買ってもらって、とても喜んでいたナツミちゃん。
それからは遊ぶのも一緒に寝るのもリルちゃんになって、私はおもちゃ箱の中でいることが増えていった。
そんなある日。
おかあさんが、「そろそろおもちゃを片付けなさい」と言って始まったお引っ越し。
五歳のナツミちゃんがよく遊ぶ、リルちゃん人形にそのお洋服、アクセサリー制作キット、お化粧セット。それらが特等席の棚に、キレイに並んでいく。
そしてあまり遊ばなくなった、お世話用人形、魔法少女変身ステッキ、おままごとセットは手の届きにくい上の棚に上がっていく。
お引越しは少し淋しいけど良いの。
だって高い棚からは、ナツミちゃんの姿を見られるから。
成長していくナツミちゃんを見守れるから。
初めて出会ったナツミちゃんはあんなに小さかったのに、こんなに大きくなってくれて嬉しいから。
だからお願い。たまには手に取ってね。
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